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「ふぅ……な、何だか緊張してきたよ」

 

「アキさんが言うには今日で終わりですから……頑張りましょう、さっちゃん!」

 

「さっちん?」

 

「「さっちゃんです!」」

 

 

 一足先に到着したため、校舎からやや離れた場所で待機。

 

いずれ役者が揃う。それまでに、何とか心臓を落ち着かせておきたい。

もうさっきから煩くて煩くて仕方ないのだ。

 

 

「……そろそろ行きますか。志貴たちも来たし」

 

 

 向こうに見えるのは、校内へと足を踏み入れた志貴とアルクェイド。

 

声はかけない。

互いに為すべき事は決まっているのだから、今はそれに極限の集中力を。

 

 

 弓塚に琥珀を下すように指示。

 

そしてこちらに、正確には校舎へ向かい駆けて来る影に、棒手裏剣を投擲する。

同時に弓塚が跳んだ。

 

 

「っ!?」

 

 

 上空で衝突。互いに弾ける。

 今度は俺が琥珀を抱え、弓塚の元へ駆け寄った。

 

 

「弓塚、大丈夫か?」

 

「うん、心配しないで」

 

 

 出だしは完璧。

 ここから先、志貴がロアを滅するまで代行者の監視は俺たちが防ぐ。

 

 

「……七夜アキハ、ですね?」

 

「ダメージ皆無か。しかも色々調べられたっぽいし」             

 

 

 敵意を持って、姿を現すシエル。

隣の弓塚が息を呑む。

 

 今のは不意打ち気味の攻撃だったので、弓塚自身も当たった手応えはあったのだろう。

 それなのに全く効いてない素振りでは、自信を無くすし恐ろしくもなる。

 

 

「弓塚、気にするな。

代行者はこっちの存在に気付いてたからな、何かで防がれたんだろ」

 

「え……う、うん。わかった」

 

 

 互いに構える。

 シエルは黒鍵を、弓塚は拳を、俺は琥珀を背に隠して牽制の棒手裏剣と魔眼を解放する。

 

 

「通してほしいと言っても、聞いてくれそうにありませんね」

 

「志貴と真祖がやられた後ならいくらでもいいぞ。むしろ協力してやりたいぐらいだ」

 

「……やはり、貴方の意図が掴みかねません。

ロアを滅ぼすのは二人に任せ、自らは私に戦いを挑むなど……そこまでして、あの少年を監視させたくない、見せてはいけないモノがあるというのですか?」

 

「答える気はない。だが、あんたがここに留まっていてくれれば幸せな結末を迎えられる。

だから出来れば、代行者なんかと俺は戦いたくない」

 

「ロアの討伐は私の使命。真祖は教会の敵であり、少年は監視対象。貴方の戯言を信じる義理もありません

……先日の繰り返しですね」

 

 

 力ずくで通ります。

 そう言って黒鍵を投擲し、同時に大地を駆けるシエル。

 

 

「弓塚、通すな!」

 

 

 黒鍵を避け、弓塚が前に出る。

 拳を向けるのはシエルより一歩手前。

 

 

「吹っ飛べ!」

 

 

 コンクリートを破砕する。

 飛び交う破片と弓塚の力を目の当たりに、シエルは大きく後ろへ跳んで立て直す。

 

 

「くっ、こんな住宅街で」

 

 

 瞬間、魔力を感じた。

 おそらく結界の発動。一級の魔術師であるシエルには造作もない事だろう。

 

 

「……どうしても、私の邪魔をするというのですか?」

 

「イレギュラーだからな、仕方ないだろ」

 

 

 シエルの問いに当然のように答える。

 ただ、シエルに意味はわからないが。

 

 

 裏ルート、別名遠野家ルートで無い事は最初からわかっていた。

 琥珀の問題は命を張って消したし、翡翠、秋葉も多分、問題を抱えてはいないと思う。

 

 その代り、下手に干渉したせいで志貴は目を付けられるようになった。

 

故にシエルにとって志貴は教会の監視対象。

志貴の方も相手を魔術師かどうか判別できるので、この二人の間に原作のような雰囲気が芽生えるはずもない。

 

 

(だから、この世界はアルクェイドルート)

 

 

 本来この場にいて良いのは、ロアと志貴、アルクェイド、そして中立である代行者だけだ。それ以外は居ちゃいけない。

一般人でさえも。魔術師なぞもっての他だ。

 

 

 説得は無理。

 八年前の行動の代償がこの結果なら、今度も頑張って変えるしかない。

 

 今回は琥珀だけじゃない。

弓塚もいる。俺だって強くなるよう努力してきた。

 

 

 身体の震えは止まらないが、それはいつだって同じ。

 だったら、大丈夫だ。

 

 

「――――俺たちは互いにイレギュラーなんだ。だから、ここから先は入らせない」

 

 

 

 

 

 

憑依in月姫

第二十話

 

 

 

 

 

 

<さつきside

 

 

 

 

「あなたの相手は、わたしっ!」

 

「っ、これはリビングデッド、いや、ヴァンパイア!?」

 

 

 懐に跳び込み、爪を振るう。

 

 人を攻撃するのは気が引ける。

でも、わたしが手を休めたら、この人は容赦なく襲ってくるかもしれない。

 

 

 それが代行者だと、アキ君が言っていた。

 

 

「やはり、ここまで進化していましたか。見間違いではなかったようですね」

 

「やああぁっ!」

 

 

 隙を見つけ、そこへ拳を叩きこむ。

 相手は避けずに剣を交差させ、わたしの拳を止めようとする。

 

 

(そんなんじゃ、止まらないっ!)

 

 

 砕く。

でも、相手に動じた様子はない。だって相手はすでに投擲体制。

 

両手に剣を二つずつ構え、わたしに向かって投げつける。

 わたしは構わず突き進む。それらの剣は、見当違いの方向へ飛んでいったから。

 

 

 アキ君の魔眼。

 

何回使えるかはわからないけど、投げる瞬間に相手の指先を曲げると言っていた。それが援護だと。

 

 

「いけっ、弓塚!」

 

 

 後ろから棒手裏剣が放たれる。

 駆けようとして……右手の痛みに思わず立ち止った。

 

 剣を砕いた時に触れた部分が、火傷のような痕を残している。

 ジュクジュクと、まるで汚いものを浄化するように。

 

 

(確か黒鍵、だったかな?)

 

 

 代行者が使っている対吸血鬼用の武器だと、アキ君が言っていたような。

 聖書を魔力で編んで刃にしているから、効果は抜群。……うん、実感した。

 

 

「恐ろしいモノを飼っていますね。彼は」

 

 

 電柱の上へと後退し、わたしに鋭い視線が向けられる。

 ……すごい、嫌な眼だ。

 

 

(化け物……だもんね)

 

 

 アキ君と琥珀ちゃんは普通に接してくれているから、時々忘れてしまう。

 わたしが人間じゃないって事を。

 

 

 黒鍵が飛来する。うち、真っ直ぐ飛んできたのは半数。

 

触れてはいけない。

 さっきと同じ失敗はしないため、全て避ける。

 

 

 今は、身体が軽い。

 

隣町に潜伏していた三日間、見つからないように、わたしは昼夜関係なしに部屋の奥でずっと気配を消していた。

だから、琥珀ちゃんの感応能力がどれほどのものなのか試す機会はなかったけど……、

 

 

(この程度じゃ、当たらない!)

 

 

 絶対の自信を持って避ける。

 いつもより、余裕がある。相手の攻撃は見えるし、表情も見える。見えてしまう。

 

 

「代行者さんっ!」

 

 

 声の代わりに返ってくるのは殺気を込めた黒鍵。

 前転してやり過ごす。足に力を込め、一気に肉迫した。

 

 

 アキ君の話を聞いてから、ずっと気になっていたことがある。

 

 

「アキ君の提案を断ったのは、わたしのせい!?」

 

 

 振るわれる剣に適度な距離を置く。

 そして、もう一度聞いた。

 

 

「アキ君が化け物をかくまっていたから、アキ君を信用できないの?」

 

 

 今になって思う。

 わたしは吸血鬼だけど、それが裏の世界でどのくらい疎まれているのか知らない。

 

 

 敵意の眼差しを向けられたのは二回ほど。

 真祖さんと代行者さんから。

 

 遠野君に初めて会った時も、かなり冷たい態度を取られたけど……

あれはわたしが吸血鬼だからと言うよりは、アキ君を傷つけていたからで、少し違う。

 

 

 教会は魔術の漏洩を防ぐ機関。

多分、裏世界の警察みたいなものだと思う。

 

 そこに所属する代行者さんとわたし達は敵対している。

 

 

だから不安になる。

 わたしのせいで、アキ君と琥珀ちゃんに迷惑かけているかもしれないから。

 

 

「しっ」

 

「わわ!」

 

 

 わたしの想いなんて関係ないと言うように、追撃がわたしを襲う。

 

 

アキ君だってこの人と話し合いは出来なかった。

それをわたしがやってみようなんて思わない。出来る筈もない。

 

相手の沈黙は勝手に解釈して受け取る。

わたしはただ、訴えるだけなんだ。

 

 

「だったら、それは違います! アキ君は吸血鬼のわたしを命懸けで助けてくれた。そんな人が悪人だと思いますか!?」

 

 

 投擲が止まる。

 言葉に……反応した?

 

 

「……それは吸血鬼がどのようなものか、知ってて言っているのですか?」

 

「えっ……」

 

 

 不意に投擲される黒鍵、早いっ!

 剣はわたしを狙わず木に刺さり、次の瞬間、燃え始めた。

 

 忌々しそうに、代行者さんはわたしの向こう側に目を向ける。

 

 

「吸血鬼は人を襲います。それを助けるのが貴女は善だと言うのですか?」

 

「わ、わたしは人を襲っていません! 血だって人を襲わない方法で手に入れてます!」

 

「……そのような事は、今だけです」

 

 

 

 

 その言葉に、心臓が高鳴った。

 

 

「確かに貴女は自我を持っていて、人を襲う事を良しとしないヴァンパイアかもしれません」

 

 

 月を背に黒鍵を構える代行者さん。

 形勢は不利じゃない。

 

 

 でも、その言葉の得体のしれない迫力に、わたしは後ずさった。

 

 

「ですが、いずれ貴女も堕ちる。吸血衝動を抑えられず、それに身を任せて人を襲うようになる」

 

「な、ならないかもしれません! わたしにはアキ君と琥珀ちゃんがいます!」

 

「なら尚更、自害なさい。いつまでも今が続くなんてものは幻想です!」

 

 

 怒っている。

 わたしの境遇、それとも考えに対して?

 

 表情は大して変わっていない。

でも、わたしを殺そうとする動きに、怒りが見えた。

 

 

(や、やられるっ!)

 

 

 慌てて飛んできた黒鍵を避ける。

 そして気付いた。

 

 わたしが避けたその軌道の先に、アキ君と琥珀ちゃんがいることを。

 

 

「アキ君、危ない!!」

 

「大丈夫っ!」

 

 

 琥珀ちゃんを抱えて避ける。

 届くまでの距離が、抱えたままでの回避を可能にしていた。

 

 

「だから貴女は、死になさい!!」

 

「――――またっ!」

 

 

 わたしとアキ君たちの延長線上からの投擲。

 

避けたら、黒鍵はアキ君たちへ襲いかかる。

代行者がわたしで隠れて、アキ君も魔眼が使えない。

 

 

(攻撃して投擲の隙を無くすしかない!)

 

 

 わたしには黒鍵は止められない。

 

 位置を考えながら戦う事なんて難しくてできないし、そういった技術を含んだ戦い方は相手の方が圧倒的に上。

 

 

 だから一直線に駆けた。

 もうこれ以上、先手を打たせないために。

 

 

「――――そこです!」

 

「わっ、か、身体が!?」

 

 

 いきなり地面に魔方陣が浮かび上がり、光を発する。

 同時に、全身が重くなる感覚。

 

 

「でも、このくらいで……!」

 

 

 身体は動く。

 魔方陣から抜け出すため、地面へ思いっきり拳を振りおろす。

 

 

 けど、その拳が地面へ届く前に、すでに次の手は打たれていた。

 

 

「逃がしません!」

 

 

 コンクリートに刺された剣が五つ、もの凄い音をたてながら地面を走り、わたしの周りを取り囲む。

 そして動かなくなる身体。

 

 

 これは、結界を二重に張った!?

 

 

「ヤバい、弓塚!!」

 

 

 アキ君が叫ぶ。

 投擲された五つの黒鍵がわたしの目前まで迫っている。

 

 

「い、いやああああぁ!!」

 

 

 必死になって、左手を横に薙ぎ払った。

 

でも、いつも通りには動かない。

 左手を犠牲にして弾けたのは顔を狙って放たれた三つまで。

 

 

 残る二つは両肩に突き刺さって――――わたしは吹き飛ばされた。

 

 

 背中に衝撃。

 

瓦礫の崩れる音で、自分が民家の塀を壊してしまった事はわかった。

剣が突き刺さっただけなのに、だいぶ飛ばされている。

 

 

「い、生きてた……」

 

 

 叫び声が聞こえる。アキ君と琥珀ちゃんの。

 黒鍵が刺さっているせいで、全然力が入らない。

 

 肩を見てみると、刺さった辺りが石になっていた。

 

そのせいで、さっきから上手く腕が動かせない状態。

 

 

一気に、詰めの状況まで持ってこられたんだ。

 

 

「弓塚っ――――!!」

 

 

 目の前で金属が弾けた。

 わたしを殺そうと飛来した黒鍵を短刀で、渾身の力をのせて弾いたアキ君。

 

 

「アキ君、危ない!!」

 

 

 魔力が切れて魔眼は打ち止めらしい。

 一発目を防ぐのに精一杯だったアキ君は、姿勢を崩したまま、飛んでくる二つ目の黒鍵に対処できずそれが脇腹に刺さる。

 

 

「ぶっ!」

 

「ア、アキ君!」

 

 

 わたしの時と同じように、刺さった瞬間に後ろへ吹き飛ばされて、わたしの前に転がりこむ。

 

 

(わ、わたしのせいだ……)

 

 

 余計なことを考えていたから、捕まって、追い込まれて。

 忠告されていたのに。代行者が強いこと、命懸けで戦わなきゃいけないこと。

 

 倒れているアキ君の頭から、お腹から、血が薄らと流れていく。

 

 

 自分が嫌になる。

 

 

 だって、こんな時、普通なら一番に心配するだろう。

人が血を流して倒れていれば当たり前の考え。

 

 

 でも、わたしは違う。

 

 

 わたしはこんな時でさえ――――

 

 

 

「さっちゃん!」

 

 

 

 ――――血が、おいしそうと思ってしまう化け物で、

 

 

 

「弓塚っ! 前!!」

 

「――――さっちゃん!!」

 

 

 勢いよく抱きつかれる感触。

 そのまま地面に倒れ込む。

 

 

 全身に伝わる暖かな体温に、目を覚ました。

 

 

「こ、琥珀ちゃん……わたし、ってリ、リボンが!」

 

「ほんと間一髪ね」

 

 

 見ると、琥珀ちゃんの付けていた青いリボンは黒鍵に刺さり壁に縫い付けられていた。

 そこは、さっきまでわたしの頭があった場所。

 

 

(……ボケっとしていちゃ、いけない)

 

 

 わたしがいたら、わたしがここにいたら二人とも巻き込まれる。

 

代行者は待ってくれない。

 一秒か、二秒か、すぐに次が襲ってくるから。

 

 

 

 

 ―――――と思ったら、顔を殴られた。アキ君に。

 

 

「いってええ! 手が折れた、今ポキっていったよな!?」

 

「……な、何やってるの?」

 

「弓塚、気にしたら負けだ。そもそも巻き込んだのはこっちだし」

 

 

 何のこと、と聞こうとして口を閉ざす。

 アキ君が真面目な表情。……切り替えが早いな。

 

 

「気にするな。お前は例外で大丈夫だから。俺が保証する」

 

「さっちゃん、つらい顔してるよ。でもね……」

 

 

 倒れているわたしに二人は言う。

 

わたしの言葉、聞こえていた? 

……それはないと思う。二人と距離は離れていたし、何よりそんな余裕もなかったはず。アキ君は特に。

 

アキ君はいつも通り“知って”いたのかも。

 琥珀ちゃんはわたしの表情でわかったに違いない。

 

 

(気持ちをわかってくれるのは嬉しいけど……今は、ずるい)

 

 

 吸血鬼になる前も、なった後も、優しいまま態度を変えない人がいるのはずるい。

 そんなんじゃ、わたしも変われないから。

 

 

「……アキさんはこういう時、“正しい人”ですから。信じてあげましょう」

 

「何だか含みのある言い方だな、おい」

 

「――――アキさんっ!」

 

 

 琥珀ちゃんが叫ぶ。

 黒鍵が、わたしの命を狙って飛んでくる。

 

 

(わたしが、動かなきゃ)

 

 

 身体が思うように動かない。きっと、身体に刺さったままの黒鍵のせい。

 琥珀ちゃんが近くにいるのに、まるで人間に戻ったように力が出ない。

 

 

(二人を助けなきゃ)

 

 

 わたしがこの場から離れれば?

 ダメ。離れる力もないし、離れてもわたしが危なくなったらアキ君と琥珀ちゃんは助けに来る。

 

 

(だったら、防がなきゃ)

 

 

 どうやって。

 

 アキ君は流血していて動きが鈍く、短刀じゃ黒鍵は防げない。

琥珀ちゃんに力はないし、さっきみたいな事はもうさせたくない。

 

 

(何とかしてでも、わたしが!)

 

 

 

 

 前方へ飛ぶ。

向かってくる黒鍵に対して避けるでもなく、弾くでもなく、掴み取るために手を伸ばす。

 

 

「弓塚っ!?」

 

「見ててよ、二人とも!!」

 

 

 振り切る。化け物という考えを。

 

 

 わたしの頭は複雑にできてない。

 琥珀ちゃんには偉そうなことを言ったりもしたけど、やっぱりわたしは馬鹿で難しい事を考えたらダメになっちゃう。

 

 今は、アキ君の言葉を信じよう。

根拠がないからとか関係ない。わたしのために信じよう。

 

 

 恩返しだって終わってない。

 

 

今回の事で改めて思った。

最初に見つけてくれたのがアキ君で良かったって。

 

 普通なら抹殺されておかしくない存在なのに、一生懸命になって救ってくれた。

 琥珀ちゃんも、こんなわたしと友達になってくれた。

 

 

 

 

 だから今度は、わたしの番。

 神様も見てたら言うだろう。“君が頑張る番だ、君が命をかけて守りなさい”って。

 

 

 

 

「――――お願い、届いて!!」

 

 

 思い浮かべるのは一つの世界。

 

 

弓塚さつき、十五才。

 

日の光を浴びたら灰になっちゃうし、

血を飲まなきゃ生きていけないこの身体。

 

 

 黒鍵を掴めば、わたしの手は浄化される。後に残るのは絶望だけ。

 

 

それでも、この手は救うために――――

 

 

 そして……掴み取ったものは聖書となり、剣の柄だけがそこに残った。

 

 

「――――で、できた!!」

 

 

 手の平を確かめる。

 火傷したような痕もなければ切り傷もない。

 

 完璧に、飛来する黒鍵を防いでみせたのだ。

 

 

「ア、アキ君、琥珀ちゃん、わたしできた!」

 

「……えっと、一体何が?」

 

「へ? いや、わたしの能力……覚えてないの?」

 

 

 ほら、と見せるようにして、わたしは石化された両肩とそこに刺さっている黒鍵を右手で触れる。

 その瞬間、石化は何もなかったようにもとへ戻り、黒鍵はさきと同じように聖書のページと剣の柄になって地面へ落ちた。

 

 

「さ、さっちゃん、すごい」

 

「……駄目だ、わからん。何その能力? そんなもの原作には……」

 

「アキ君言ってたじゃん、枯渇何とかって能力がわたしにあるって」

 

 

 そう、名前は忘れちゃったけど、効果は空気中の魔力を消す……枯渇させる、だっけ?

 

 

「でもやり方がわからなかったから、アキ君の部屋で読んだ漫画でイメージしてたの」

 

「漫画って……お前な」

 

「あ、呆れないでよ! わたしも必死だったんだから」

 

 

 最初に代行者の剣を砕く時、イメージしながら拳を突き出した。

その時は結局なにも起こらなくて、わたしがダメージを負っただけ。

 

 一度失敗していたから怖かったけど……うん、できて良かった。

 

 

 

 

「代行者さん!」

 

 

 もうこれ以上はやらせない。

 今日初めて、わたしも敵を見る目で相手を見据える。

 

 

「あなたの言うように、わたしは世界から見れば化け物で、迷惑をかけることしかできない存在で……。

だから、排除しなければいけないのもわかります」

 

 

 右手をかざし、力強くわたしは言う。

 

 

「でも、この人たちのようにわたしを救ってくれる人がいる。認めてくれる人がいる。

 だからわたしは強い吸血鬼とも戦ったし、これからさき、暴走なんて絶対にしない!」

 

 

 代行者さんの言う事は間違っていない。

 

わたしを野放しにするのは危険だし、吸血鬼を救う様なアキ君を敵だと見なすことも決して間違った行動じゃない。

 

 

 

 

 だけど、この幸せを手放したくなんてない。

 

命懸けで救ってくれたこの命。

吸血鬼だからって理由で、世界の敵だっていう理由だけで殺されるなんて絶対に嫌。

 

 

「それでも代行者さんが正義、わたしたちが悪って言うのなら……」

 

 

 そうだ、わたしの能力は枯渇庭園。

 魔力を枯渇させる、対魔術師には絶対の力を誇るもの。

 

 

「まずは、その幻想をぶち殺します!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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                       (^o^) いいぜ
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       (^o^) 三      
 \     (\\
 (o^)  < \ 三 
 (
 /  まずはそのふざけた
       幻想をぶち殺す!

 

枯渇庭園の効果は“結界内の魔力を枯渇させる”という設定。

本当のところはどうかわかりませんが(ネットを巡回しましたが、人それぞれ微妙に違っていたので)。

 

ここでは右手で触った瞬間に、その魔力を消している感じです。士郎が自身の固有結界から零れおちたものとして投影モドキを使っていたので、固有結界そのものは引き出せなくとも、こういった欠片として引き出す事はできるのかな、と考えました。

黒鍵触った瞬間、さっちんの手が焼けるんじゃね? という疑問は、触った瞬間に枯渇させる、そして黒鍵ごときの魔力量なら一瞬で消せるからスピード的にさっちんは傷つかないんだよ! ……ってことにして置いて下さい(汗