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「ちょっと、何なんですかあの金髪外人の女は!? こんな時間にうちに連れて来て、しかも兄さんと仲良さげに話を……。

 ……アキ、貴方が付いていながら一体何をしていたのかしら?」

 

「買い物から帰った後、ずっと門の前で志貴様を待っていた私(メイド)の身にもなってほしいです」

 

「琥珀! 秋葉と翡翠にテケトーな説明をしといてくれ。こっち忙しいんで」

 

「……何か最近のアキさん、面倒ごと全て私に投げてませんか?」

 

 

 ネロのホテル襲撃イベントを終えた後、アルクェイド含めて俺たちは遠野の屋敷へ場所を移した。

 

 志貴の隣に女性を置いて帰った日には、志貴ゾッコンである当主とメイドが黙ってない事はわかっていたが、何たって状況が状況だ。

 二人をほっといても命に別状はないが、ネロをほっといたらこっちがあっという間に死んでしまう。

 

 

よって二人の話し相手は琥珀に任せて、俺は志貴とアルクェイドの方へ。

 

ネロ対策としていくらか話が必要だ。もちろん移動しながらも作戦を考えあってはいたが、相手は二十七祖の一角。

 対策を一つ出せば終わり、何てものじゃない。奴が再び来るまで、可能な限り考え続ける。

 

俺個人の方でもやっておかなきゃならん事は結構多いし、何だかんだいって持ち時間はかなり少ない。

 

 

「志貴、次の襲撃はこの敷地内で迎え撃とうと思うが、何か問題はあるか?」

 

 

 帰りの道中に最低限の話し合いで決めた事だが、次の戦闘がここで行う。

 原作ではアルクェイドを囮にした公園での戦闘だったが、あそこは却下。避けながら戦うには狭すぎる。

 

 

(志貴やアルクェイドはいいだろうけど、こっちは戦闘=ほぼ回避運動……)

 

 

 地形補正が涙目。

 基本能力が他のメンツと比べて低いのだから、それに加えて地形に縛られるのだけは勘弁したい。

 

 かと言って、深夜の公園以外に人気の無い場所。

加えて俺が余裕を持って動き回れるような場所といったら……この屋敷の敷地内しかないわけだ。

 

 

「アキ……その事だけど、どうしてもここじゃなきゃダメなのか? 秋葉や翡翠を戦闘に巻き込むのは……」

 

「だから、それは大丈夫だって。さっきも言ったけど、二人は地下に避難させるから。

地下への入口は隠してあるし、少なくともあいつは志貴を敵と見なして仕掛けてくるわけだから、地下に隠れている限り二人はほぼ安全だろ」

 

「でも……」

 

「志貴、家族が心配だってのもわかるけど、出来るだけあいた空間の方がお前だって戦いやすいはずだ。ネロの様な敵の場合は特にな。

 奴は倒せたけど、志貴も重傷を負いましたってのは嫌なんだ。誰も致命傷を負わないで、かつ奴を倒せる方法を―――」

 

「……随分甘いこと言うのね、貴方」

 

「―――っ!」

 

 

 腕を組んだ格好で、アルクェイドが冷たく吐き捨てるように言う。

 甘いことを言ってる俺が気に食わないのか、それとも元々、志貴以外は全員気に食わないのか。

 

 ただ、こいつの鋭い眼つきを前にして、改めてここは“歌月十夜”ではなく“月姫”の世界なんだと実感した。

 

 

「……自分でも理想論だってのはわかってるよ」

 

 

 それだけ言って、志貴に目配せ。これ以上俺から話す気はないと。

 

このお姫様とは正直、正面切って話したくない。人の形をしているところで、強さの次元が違う生命体。

 敵ではないとわかっていても、怖いものには変わりない。

 

 

 雰囲気的に志貴もわかってくれたのか、俺に代わって、話し合いを先に進める。

 

 

「アルクェイド……家族に手を出したら、その時は」

 

「やーね、ちょと睨んだだけじゃない。志貴は協力してくれてるし、私からそれを不意にするような事はしないわよ。

 それより早く話を進めましょ」

 

 

 やれやれと両手を広げて、雰囲気をガラリと変える姫。

 

 

「はぁ……取りあえず、奴が襲ってくる頃合いは?」

 

「早いわよ。遅くとも今夜中には来るわね」

 

 

 まるで100パーセント、アルクェイドは確信があるように言ってのける。

 

 

「さっきの戦闘ではっきりと志貴を敵と認めたし、私が弱っているのもバレたわ。早く仕掛けるメリットはあれど、遅くしてのメリットはない。

 あるとすれば人間を捕食して力を蓄えることだけど……それでも微々たるもの」

 

 

 それに、と言葉を続けて、志貴と俺を見つめる。

 

 

「気づいてるんじゃない? 数が多くて煩わしかったから、もう放っておいたけど……

あいつ、私たちがあの場所を出てからずっと―――」

 

 

 ―――監視してるわ。

 

 

 その言葉と同時に、屋敷内に警報が響く。この警報は、敷地内に何者かが入った証拠。

 考えるまでもない。こんなタイミング、この状況では奴しかいない。

 

 

「驚かないって事は、志貴はともかく、貴方も気付いてたのね」

 

「……戦闘じゃ逃げ回るしかできないからな。せめて常に周囲に気を配る事ぐらいはするさ」

 

 

 随分、雑魚な扱いをされているが、強く見られるよりは余程いい。

 

 返事を聞いたアルクェイドは特に何か反応するわけでもなく、そのまま窓から跳び出て行った。

まぁ、普通の人間との会話なんて興味ないよな。

 

 

 こっちもぐずぐずしてはいられない。

 敵はすでに敷地内にいるのだから。しかもさっきと違って、敵は最初から本気で来ているに違いない。

 

 

「―――志貴っ!」

 

 

 アルクェイドに次いで、出ていこうとする志貴を呼び止める。

 武器入れとなっている筒を背にかけ、投擲用のナイフを手に持ち戦闘態勢。しかし、眼鏡は外していない。

 

 

(魔眼を開放してないって事は、まだ代行者も近くにいるってことか……)

 

 

 気配なんてものはわからないが、志貴がネロ相手に眼鏡をかけている。

つまりは確実に、今もシエルから監視を受けているわけで。

 

 

「どうかした、アキ? 奴はアルクェイドと二人で倒すから、アキは無理に出てこなくても大丈夫だけど」

 

「いや、今回はさすがに俺も戦う。死にはしないから安心しろって。

 その事なんだが、できればネロを玄関の正面辺りに誘導してくれないか? 作戦があるんだが、上手くいけば奴を倒せる」

 

「……わかったけど、アキこそ無理しないでよ。……弓塚さん、だっけ? あの子の時とは強さも状況も違うから……」

 

「そんなに心配するな。今回は警備システムを使って、遠隔操作しながら援護するだけだ。

 だから、志貴も無茶だけはするな。倒せないと思ったら、誘導することだけ考えてくれ」

 

「……そうだね、確かに今度の敵はいつもより厄介だ。アキの作戦に頼るかもしれない」

 

 

 窓に足をかけ、志貴は勢いをつけ跳躍する。

 屋敷の周辺に強い結界が張られているためか、空に浮かぶ月が、今日はやけにぼやけて見えた。

 

 

 

 

 

憑依in月姫

第十四話

 

 

 

 

 

「―――防衛システムの八十パーセントが沈黙っ! そんな、百八もある防衛網がものの五分で……!?」

 

「あ……ありのまま、今起こったことを話すぜ。

…………気付いたら、なんと屋敷内まで獣に侵入されていた!!」

 

「獣さん、もうやめて! 遠野家の補正予算はもうゼロ、」

 

「おい琥珀、そろそろ本気でやばいぞ!?」

 

 

 少なくともパロディってる場合ではない。

 

 

「えっと、これでも真面目ですよ? 手は動かしてますし、命がかかってますから。

それにこういう時こそお喋りしてないと……怖くなりません?」

 

「……そこまで考えてなかったわ」

 

 

 屋敷の二階にあるコントロールルーム。

 そこから敷地内に置かれた防衛システムを管理、遠隔操作して獣どもを撃ち殺す……はずでしたが。

 

 

「ネロのおっさん、本気すぎだろ……」

 

 

 十分も持ちませんでした。動物ならまだしも、幻想種っぽいもの出されたら対処しようがないわ。

 

 

「あぁ、九十九パーセントやられました。……これからどうします?」

 

「どうするったって……」

 

 

 画面は砂嵐、音はノイズしか聞こえなくなった機械から目を離し、琥珀は席から立ち上がる。

 

 

「アキさん、また志貴さんの所に行くんじゃありません? だ、だったらせめてドーピングだけでも」

 

「怖いからやめてくれ」

 

 

 片手に赤い液体の入った、もう片方の手に青い液体の入った注射を構える琥珀。それを見て誰が頷こうか。

 

 

(しかし本当にどうする? ここじゃせいぜい、窓から戦闘を見守るのが精一杯だ)

 

 

 だからと言って、安易に外に飛び出るわけにもいかない。

 確かに戦闘場所として動きやすいここを選んだが、それは戦闘を行わなければならない状況を考えての選択であって、自ら戦地に飛び込むわけじゃない。

 

 ホテルの時に直に見てわかったが、志貴は思っていた以上に強かった。

 よって戦闘への直接的な援護は、志貴にとっては邪魔になるだけだろう。

 

 

「そうなると、この部屋で外を見守りながら待機しているのが一番安全……」

 

「あれ? ……ドアの向こうから、何か聞こえませんか?」

 

「―――琥珀、ちょっと我慢してくれ」

 

「え、きゃっ! ちょ、ちょっとアキさん、何してるんですか!?」

 

 

 何って、こう背中と膝を抱えてお姫様抱っこ。

 

 抱えたまま、窓を足で蹴り開ける。窓が外れて下へと落ちるが気にしない。実は結構焦っているのだ。

 

 

「ヤバい。すっかり忘れてたが、ネロに攻められて部屋で待機とか―――」

 

 

 バキっと部屋のドアが割れると同時に、窓の外へ急いで跳び出す。

 どっかで見たようなBADエンド。月姫のゲームをやってなかったら、代わりに今、確実に琥珀と喰われていたところ―――

 

 

「サ、サメ!?」

 

「琥珀、掴まってろ!!」

 

 

 琥珀の手にある注射器二本を取り、サメの頭部めがけて思いっきり投擲する。

 

 

「ギャアアアアアアアアア嗚呼ああ―――!!!」

 

「おわっ、サメなのに“ぎゃああ”って叫んでる!?」

 

「ち、違いますよ! サメに打つから、人体に注射すれば普通にドーピングです!」

 

 

 着地し、すぐに距離を取る。

ワンテンポ遅れてサメも落下。絶命したのか、黒い泥となり、地面に消えていった。

 

 

「……琥珀の薬のおかげで助かったな」

 

「褒められてるんですか? 全く嬉しくないんですけど……」

 

 

 抱えたままの琥珀が拗ねているが、こっちはそんないつも通りの会話はできない。

この戦闘の中、緊張のせいで頭が回らん。

 

次はどうするか。さすがにいつまでもここにいる訳にはいかない。腕も疲れるし。

 

 

「……今、私のこと重いって思いませんでした?」

 

「よし、上に移動するか」

 

 

 ガキの頃、色々あって得意になった壁登り。

 琥珀を抱えたままでも、この屋敷なら簡単に上まで登り切れる。

 

 

「スルーですか?」

 

「すまん琥珀。こっちは今緊張でガチガチなわけで、少しは見逃してくれ」

 

 

 屋根まで上り、安定した場所に琥珀を下ろす。

 

屋敷の周囲には多数の獣の気配が。だが、肉眼で確認する限りは大型動物の類は見られない。

 ついでに周辺の上空も確認してみるが……。

 

 

(やっぱり。カラス一匹いやしない)

 

 

 直接こちらを襲ってきたのはさっきの奴を除いてほとんどが犬程度の大きさ。

どうやらサメが俺にとってのボスだったらしい。

 

 

「……あの、アキさん? 私たちって結構追い詰められてます?」

 

「へ? 何で?」

 

 

 立っているのが怖いのか腰を下ろしたまま、琥珀は不安そうな顔して聞いてきた。

 

 

「いえ、何だか周りを睨んでいましたから。……カチカチ歯を鳴らしながら」

 

「……これは武者震いだ。緊張してるから仕方ない」

 

 

 怖いからってのは口に出さないでおいた。情けないし。……いや、今更だけどさ。

 

 屋根に上ったのは安全確保のため。

それに加えて、ここなら屋敷周辺を遮られる事なく見渡せるから。

 

 

(―――いた)

 

 

 目を凝らし、遠くで行われている戦いを見つめる。

 予想していた通り、そこには大型動物や飛行能力のある動物、幻想種っぽいものが、ネロを中心にして志貴とアルクェイドに襲いかかっていた。

 

 こっち側に強い駒を持ってくるよりも、志貴たちの方に回した方が良いというのは、相手も分かっているらしい。

 特に空から攻められればより密度な攻撃ができるため、ネロがそれを志貴たちへの攻撃に使わないはずがない。

 

 

 まぁ、そのおかげでこっちは屋根にいれば、獣も襲って来れずに安全になっているのだけど。

 

 

「……よし、思い通り」

 

「防衛網を早々に突破されて、おまけに死にかけたのもですか?」

 

「……そこ以外はだ。少し空気嫁」

 

 

 トラブルはあったが、それでも考えていた範囲内。

 

志貴が魔眼を解放できないという不利な状況下であっても、七夜の体術を駆使し縦横無尽に跳び回るその姿は、とても苦戦している風には見られない。

 

 志貴は様々な武器を用いて地上と空の獣を数多く倒し、アルクェイドは魔眼の使えない志貴に代わって大型から幻想種を相手する。……と、即席ながらそれなりに連携も取れているし。

 

 

(アルクェイドと青子って性格近そうだからな……それの副産物か?)

 

 

 そうなると嬉しい誤算だ。

 志貴がアルクェイドに魔眼の事を話したかどうかはわからないが、連携が取れているのなら問題ない。

 

 魔眼が使えないので決定的な攻撃はできないが、それはネロも同じ。

 ホテルでの戦闘で片腕を根元から“殺された”奴は、常に志貴から距離を取っている。

 

 警戒心が異常な故、離れて獣を放出する以外に戦術が取れない。その結果、攻めきれないでいるのだ。

 

 

 

 

 ……以上、ヤムチャ視点でした。

 

 

「さて、あと確認しておくことは……」

 

 

 戦闘場所から目を離し、周囲を、今よりももっと遠くを丁寧に見回していく。隠れているものを探すように。

 

 戦闘場所に屋敷を選んだのは、単に動きやすいからだけじゃない。

 戦闘で役に立たないなら、せめて理想の状況を。舞台裏で駆け回るのが、できる精一杯の仕事なのだ。

 

 

(……よし、見つけた)

 

 

 七夜の身体機能を舐めちゃいけない。暗闇の中、電柱の上からこちらを見つめる人影を発見。

 間違いなく代行者。数百メートルは離れているので、どこを見ているのか、どんな表情をしているかまではわからない。

 

 

 でも、位置は確認した。

 

 

「―――アキっ!!」

 

「っ、来たか!」

 

 

 屋敷正面、ネロに駆け寄る志貴と、獣を大量に放出しながら志貴と距離を稼ぐネロ。

 その二人の戦いが、目の前に来ていた。

 

 

(さすが、しっかり誘導してくれたか!)

 

 

 位置を確認。あと数メートル下がれば、その時をもって奴を追い詰めれる。

 

志貴の身体に怪我はない。ネロは志貴との戦いに集中していて、アルクェイドは獣を押さえている。

 

代行者の位置は確認した。ならば後は―――

 

 

 

 

 ポケットからリモコンを取り出す。

屋敷に帰ってから肌身離さず持っていたこれは、この作戦唯一無二のキーポイント。

 

 

 

 

 ―――後は、機を待ち奴を地下へと落とすのみ!

 

 

「ちっ!」

 

 

 近寄ってくる志貴に舌打ちし、ネロが大きく、高く後ろへ跳ぶ。

 着地地点を予測して、ついにボタンに手をかけた

 

 

「―――それをっ、待ってい(ry

 

「ア、アキさん! 秋葉様が!」

 

「へ?」

 

 

 慌てて指さす琥珀。その先には屋敷から出てきた秋葉と翡翠が。ちなみに両方とも赤毛だった。

 

 

「あの馬鹿、出てくるなって言ったのに!」

 

 

 しかし今、そっちを気にしている暇はない。

 ネロに合わせて地下への扉を。奴を地下に落とせば、シエルから奴の姿を見ることはできなくなる。

 

 それに合わせて志貴がすぐに地下へ追いかけ、直死の魔眼で決着をつけさせる。

 このチャンスを逃したら、おそらくネロは倒せないのだ。

 

 

(集中しろ、俺!)

 

 

 ネロへと強引に視線を戻す。

 敵だって馬鹿ではない。落とすタイミングを見余ったら、それこそ終わりだ。

 

 

 跳んだネロが落下する。

 着地までのカウントダウン、32……

 

 

「食らいなさい! 32文ロケット砲!!」

 

「ぐはああああアアァ―――!!」

 

「何やってんすかあんたは―――!?」

 

 

 ボタン押す直前に、これ好機と見たアルクェイドが勢いをつけて思いっきりドロップキック。

 ネロが豪快に屋敷へと吹っ飛び、コントロールルーム辺りに突っ込んだ。

 

 

「わ、こ、これって崩れてません!?」

 

「降りるぞ、琥珀!」

 

 

 崩れ落ちる前に琥珀を抱え、跳び下りる。

 どれだけ威力があったのか知らないが、今ので大事な柱が折れたらしい。

 

 地面に着地し、琥珀を下ろす。

 振り向いたら、すでにそこは瓦礫の山だった。何かシュールだ。

 

 

「ア、アキ! これは一体どういう……出てきてみたら獣がうじゃうじゃ、おまけに屋敷が……」

 

「だから出てくるなって言っただろ。あと、今話しかけないでくれ。こっちも頭こんがらがってんだよ」

 

 

 ネロを地下に落とそうと思っていたら代わりに屋敷が崩壊してました、という結果。

 

さて、ほんとどうしよう(汗

 

 

「あなたの都合なんて知りません。あぁ、あの中には命よりも大事なものがあるというのに……」

 

「俺と翡翠を写真から取り除いて、志貴とお前が寄り添ってるようにPhotoshopで上手く編集したアルバム’sか?」

 

「それだけじゃありません!!」

 

 

 全壊した屋敷。この下にはネロが埋まっているだろうが……まさか、死んだ?

 

 

「私、ちょっと取ってきます!」

 

「秋葉、少しもちつけ」

 

 

 腕を掴んで押える、が逆に俺が引きずられるので、仕方なく首裏に手刀をお見舞いする。

 そして、くたりと地面に倒れる秋葉。

 

どうせ一分もしたら起きるだろう。あのまま瓦礫の山に突っ込まれたら、また色々と混乱を呼びそうだし。

 

 

「翡翠、ちょい秋葉を見といてくれ」

 

「はぁ……いつもすみません」

 

 

 秋葉のことを翡翠に任せて、志貴のところへ向かう。

 

 二人で始末したのか、獣が消えたためさっきまでの騒々しさはない。

ただ、荒らされた敷地は朝と比べて見る影もなくなっていた。

 

 

「志貴、大丈夫か?」

 

「まあね。アキの方こそ、無事で何よりだよ」

 

 

 そう言いながら、志貴は隣にいるアルクェイドを睨みつける。

 

 

「な、何よ。そもそもネロ相手に加減なんてできないのはわかってるでしょ。

 ここを選んだのはそいつだし、いちいちそいつのいる場所を気にしてなんかしてられないわよ。外に出てる方が悪いわ」

 

「いや、中にいたら間違いなく死んでたんだけど……。

 まぁいいか。志貴もそう怒らなくていいって」

 

 

 ナイフに手をかけていた志貴は、渋々といった感じでそれをしまった。

 心配してくれるのはいいが、こんなところで仲間割れ(一方的)を起こしてしまったら、それこそ収集がつかなくなる。

 

 

「……ふぅ、わかった。アキがそう言うなら」

 

「お、おう、サンキューな」

 

「それでアキ。話は変わるけど、さっきの作戦ってのは? 一応、あいつを誘導したんだけど」

 

「う……それはだな」

 

「―――待って、来るわよ、二人とも!」

 

 

 突如、アルクェイドが叫ぶ。

 何が、と俺が言いかける前に地響きが起こり、

 

 

「ハアアア――――――ッ!!」

 

 

 背中に異なる六対、計十二枚の翼を広げ、瓦礫をぶち破り空へと羽ばたき、その姿を現した。

 

 

「な、飛んだ!?」

 

 

 原作ではなかった使い方。

 天使のような白い羽、悪魔の思わせる黒い羽根。それらはどこの獣から取ったものなのか。

 

 上空から俺たちを見下ろすネロ・カオス。

 二十七祖に数えられる吸血鬼。眼光だけでなく、今では存在そのものが威圧感を撒き散らす。

 

 

「ふん、人間が増えたかと思えば、どれもこれも異能者か。

 ……ならば、私も本気を出さざるを得ないか」

 

「ちょ、それネタ、」

 

「ゆくぞ、これが我の全力…………全壊!!」

 

 

 ネロの身体がまるで風船のように膨れ上がる。

 何それ、自爆フラグ? と思っていたが、予感は外れ。

 

 地球上の大型動物。それらが一斉に、そして次々と奴の体内から弾き出された。

 

 

「これは……ヤバい!」

 

「アキ、避けてっ!」

 

 

 ドスっという落下音じゃ物足りない。周囲に爆弾が投下されるといっても良いくらい。

 無差別の解放。それも上空から、混沌の不死性とその数を最大限に利用した攻撃。

 

 避けそこなったら確実に死ねる。

 だが、カラスの弾丸に比べて攻撃範囲が大きすぎる。この数を上から放出され続けたら、数分もせずにこっちが詰む。

 

 

「ちょっと! 向こうの人間、危ないんじゃない!?」

 

 

 アルクェイドが示す先には琥珀。上から打ちてくるキリンを見つめ、足を動かす気配のないまま、立っている。

 

 

「琥珀流抜刀術……奥儀っ!」

 

「ちょっと待て―――ゐ!!」

 

 

 もはやタックルをかます勢いで跳びつき、二人してごろごろと地面を転がる。

 頭が混乱しているのはわかるが、それでも今のは無謀すぎる。

 

 

(追い詰められてるな……もう作戦とか言ってられないぞ、これは)

 

 

 空を見上げても、そこにはまだネロがいる。

 その翼が奴の奥の手だとしたら、この攻撃が有効である限り、ネロが地上へ降りてくることはないだろう。

 

 

 無様に逃げ、生き延びようとする俺たちを見て、奴は口元を釣り上げて笑う。

 まるで、もはや勝利を確実なものとしたように。

 

 

「あ、あれは……」

 

「クジラだあああああぁ―――!!」

                                                   

 

 全長30メートル以上。多分あいつはシロナガス。

 そいつが空から降ってきた。

 

 

「地下ハッチオープン! みんな、跳び込め――――――!!!」

                                              

 

 ボタンを押し、地下への扉をついに開ける。

 琥珀の手を引いて中へ。頑丈にできた地下の深さは10メートル以上、急な滑り台を使って底まで落ちる。

 

 

「アキさん! 秋葉様と翡翠ちゃんが!」

 

「あっ」

                                                          

 

 この騒動の中、秋葉はまだ気絶したまま。

 

志貴もそれに気づいたのか、途中で方向転換し秋葉と翡翠のもとへ駆けた。

 寝ぼけている秋葉を担ぎ、翡翠を腰に抱えて、もう上には大きな影が迫ってる。

 

 

「志―――!」

 

 

 叫び声が届く前に、俺は地下へと落ちていく。

 1秒遅れて、ガツンと大地震を思わせる揺れが身体を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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(ryとは略と言う意味。ryakuの頭二文字を取ってry。つい最近まで知らなかったわー。

戦闘シーンなのにアキが全く戦っていない件。まぁ、ヤムチャポジションだから仕方ない… (--