「…………暇だ」

 

 

 門の前を掃除しながら、ふと呟く。

 遠野家は長い坂の上にある。屋敷から少し歩けば、所々に桜が咲いている桃色な三咲町が見渡せるだろう。

 

 四月の初め。今日から高校生活がスタートだ。

 ……志貴のな。

 

 

「まあ、面倒くさいからいいんだけど」

 

 

 志貴が帰ってきたことにより“遠野シキ”は原作通りの人物へ。

俺はサブキャラらしく元の“七夜アキ”に戻って、琥珀や翡翠と同じ使用人に。秋葉の手伝いもするが難しい事は出来ないので、もっぱらこっちの家事がメインになる。

 

 琥珀と翡翠は買い物で、志貴と秋葉は始業式。志貴がそろそろ帰ってくる時間なので、俺はこうやって玄関先を掃除中。

言い忘れてたが、秋葉には原作通り浅上の女学院に通ってもらっている。拝み倒して何とか。

 

 どうせすぐに志貴と同じ高校に通いたいと言い出すと思うが、二週間でいい。

 すでに猟奇殺人事件は起きているのだ。それだけ伸ばせれば、その頃には本編の話は終わっているはず。

 

 歌月十夜では確か同じ学校だったのだから、そこはもうどうなってもいいだろう。

 

 

「問題はいつアルクのイベントが起きるか、また起きたと知る方法なんだが……」

 

「はぁ、はぁ……か、考えてるとこ悪いけど、その前に水、いいかな?」

 

「おわっ、志貴!? お前いつの間に!?」

 

「はは……ただいま、アキ」

 

 

 驚きの余り、手にしていた箒を落とす。

 呼吸が乱れているのか、膝に手を置いて必死に息を整えている。

 

 見た感じ、全力疾走でもしてたのか。

 取りあえず心臓に悪いのでやめてほしい。気がついたら隣にいるとかあり得ないし。

 

 

「てかどうしたんだ? お前がそんなに息乱してるなんて珍しいな。

 ……一応聞くけど、手足ついてるよな? 怪我はなさそうだが……」

 

 

 辺りに気を配りながら、志貴の身体をチェックする。

 掃除なんてしてる場合じゃ無い。学生服を脱がせ、頭のてっぺんからつま先まで、入念に触って異常がないかを急いで確認。

 

 

「だ、大丈夫だって。そんなに心配しなくても!」

 

「いやいや、照れてる場合じゃないぞ」

 

「だからって、シャツまで取らなくていいだろ!?」

 

 

 し、心配してくれたのは嬉しいけどさ、とボタンをはめながらそっぽ向いて言う志貴。

 顔赤くなってるけど……あれ? 志貴ってツンデレだっけ?

 

 

「で、ほんとに何があったんだ? お前のあの武器入れ(長筒)持ってきた方がいいか?」

 

「その心配はないよ、アキ。

 大丈夫、別に追いかけられていたわけじゃないんだ。ただ、皆の顔が早くみたくてさ」

 

 

 俺の顔を見て、ひどく汗を掻きながらも微笑む志貴。

 何があったのかはわからない。ただ、志貴がかなり心を乱されていた事。それだけはわかる。

 

だから何があったか、それが余計に怖い。

 

 

「……危険だから殺そうと思ったのか、それとも単に殺す以外に考えられえなかったのか……自分でもよくわからないんだ。

 ただ、会った瞬間に凄く身が震えた。本能でヤバいって思ったんだ。

だから、この町で何か起こす前に始末しておいた。そいつはもういないから、アキは気にしなくてもいいよ」

 

「え、ちょっ、待て志貴。お前、誰か殺したのか!?」

 

「殺したって言っても、まさか一般人には手を出さないよ。

 化け物を始末しただけ。この町にはアキや秋葉、翡翠に琥珀さん……それに、都古ちゃんもいるしさ」

 

「いちいち頬を染めんでくれ……ちなみにその化け物の特徴は?」

 

「どうだろ、人型ってのは覚えてるけど……あ、そうだ。金髪で女性だった、かな?」

 

「…………」

 

 

 緊張が解けたのか、志貴は背伸びをしながら屋敷へと入って行った。

 

 

……さて、俺は明日に備えて早く準備をしなければ。

 温かい季節になったのに、何故か身体が震えてきた。うーん、結構情けない。

 

 

 

 

 

憑依in月姫

第十二話

 

 

 

 

 

「悪い! ちょっち遅れた」

 

 

 翌日の朝。

志貴が登校、そして秋葉を車で学校に送り届けた後、俺は駆け足で琥珀の部屋へ。

秋葉の送り向かいはつい最近から仕事の内に加えられた。文句はないが……今日は止めとくべきだったかもと、ちと反省。

 

 

「琥珀、準備は大丈夫か?」

 

「んー……今やってる最中なんですけどね」

 

 

 琥珀が弄っている物は有体に言うと受信機。一昔前の蓄音器を想像してくれればわかりやすい。

 

 何の受信かって? そりゃ、昨日急いで志貴に取り付けた盗聴器に決まってる。

 人の気配や魔術には鋭いかもしれないが、さすがに胸ポケットに仕込まれている物には気付かないだろ。

 

 超小型。色々と都合良すぎじゃね? というのは勘弁な。

準備期間はたっぷりあったんだ、多めに見てくれ。

 

 

「ノイズばっかりで、どうも上手くいかないんですよ」

 

「せめて誰かと話しているってことだけでもわかればいいんだが……」

 

 

 周波数を合わせようと回して戻してと、苦戦している様子。

 俺では上手く扱えないので、得意そうな琥珀に手伝ってもらっているんだが、それでも中々難しいらしい。

 

 

(まあ、それ以前に琥珀を関わらしているのも問題なんだけど)

 

 

 以前“正しい人”と言ったのが本当だったかのように、琥珀は俺のやることに関して疑問を一切ぶつけてこない。

 例えば昨日、

 

 

『なあ琥珀、盗聴器ってあるか? できれば絶対気付かれないくらい超小型の』

 

『どうでしょう、探してみればあるかもしれません。遠野家ですし。

 お急ぎで用意するものですか?』

 

『明日、必要なんだが……』

 

『わかりました。寝る前には渡せるようにしときますね』

 

 

 ……半ば冗談で言ったらこれである。

 

 いや、盗聴器は本気で必要だったけど、だからってすんなり渡されてもねぇ。

 物が物なんで、せめて何に使うかぐらいは尋ねるのが普通だろ?

 

 

 ……いや、今はそう言った琥珀への心配よりも、志貴の事に集中しなければ。

 この件が終わったら、また改めて考えればいいだろう。

 

 

「―――あ、今少しだけ聞こえました。……えっと、女性の方、でしょうか。

 志貴さん、まだ二日目なのにもうお友達ができたんですね、それも異性の。あ、これは秋葉様には内緒にしといた方がいいでしょう」

 

(……多分、それアルクの声だ)

 

 

 琥珀は楽しそうに機械に耳を向けているが、対してこっちは冷や汗ばかり。

 内容までは聞こえない。原作と同じか、もしくは全く違う展開か。

 

 

(だが、志貴の性格自体はそう変わってないわけだし……)

 

 

 戦闘経験と家族愛、年上嫌いに幼女好きがプラスされていても、それ以外は変わっていない。

 人畜無害な中立的位置に立つ青年。

 

 少なくともアルクが悪い奴ではないとわかれば、敵対する事はないだろう。

 一方的に殺したのは志貴の方ってのも変わりなし。

 

 

特に問題はないと踏んでいるが、そこは月姫。油断したら即死亡だ。

 

そう言う訳で、念のための盗聴である。 

 

 

「よし、やっと繋がりましたよ、アキさん」

                               

「本当か!?」

 

「ちょっと待ってて下さいね」

 

 

 そう言ってボリュームを上げる。

 そして聞こえる、女性の高くて綺麗な声。

 

 

『――――した責任、取ってもらうんだから!』

 

『……っち』

 

 

 後に聞こえたのはおそらく志貴の、心のこもった舌打ちでした。

 

 

「…………えっと、志貴さん、もしかして凄く女癖が悪かったんですか?」

 

「違うと言いたいが……否定できないな」

 

「あはー、そ、そうですか……」

 

 

 そして沈黙。

 と言うか琥珀、何で赤くなってる? 意味なく機会を弄り始めたし。

 

 

(え、何この空気?)

 

 

 普段なら二人でいても平気なはずなのに、今は気まずい。

 

 あれか? “殺した責任”の“殺”が抜けてて別の意味を想像したとか?

 タイミングの悪さ、いや、でも殺した云々が誤魔化されたから結果オーライとも思えるような……。

 

 

(……っく、受信機挟んで二人とも正座だと! いつの間に)

 

 

 互いに姿勢が変わっていました。距離も微妙に遠くなってるし。

 何か、何でもいいから話題が欲しいっ。

 

 

「あ、あの、アキさん」

 

 

 空気を読んだ、もしくは空気を嫌がった琥珀が話しかけてくる。

 こいつは有難いと、俺も乗る。

 

 

「おう、何だ?」

 

「えーと、あれですよ……そう、アキさんは何で盗聴を?」

 

「え?」

 

「あ、違います、そうじゃなくてですね」

 

 

 慌てて手を振って、そうじゃなくてと繰り返す。

 

 

「何で志貴さんを盗聴するのかと思いまして。

だって盗聴は本来、怪しい人にこそすべきものじゃないですか。ですから志貴さんが何か怪しい事をなさっているのかなと」

 

「あー、なるほど」

 

 頷いて、少しだけ頬が緩む。

 琥珀なりに疑問を持ってくれていたことが、嬉しかったから。それが俺に対してじゃ無く、志貴の方ってのが琥珀らしいけど。

 

 

「そうだな、確かにそういった目的で使うのが正しいが、別に志貴を監視するためにつけてるわけじゃない。

 監視よりも、指示を出すためって言った方が合ってる」

 

「指示、ですか?」

 

 

 指示を出すなんて言い方をすると、まるで志貴が部下みたいな言い方だが、それは違うので悪しからず。

 こっちは志貴のサポート役。何をサポートするのか、その答えは志貴が無事、生きてたまま本編が終わるように導くことだ。

 

 ワラキアの夜も出てくるだろうし、この本編で志貴が死ぬのは絶対にダメだ。

 秋葉ルート? 何それ、美味しいの?

 

 

 取りあえず、月姫をやった時に素で間違えてしまった選択肢。ホテルにネロが襲来した時、部屋から出るか、否か。

 ……“部屋で待機”を選んでしまったのは、多分、俺だけじゃ無いはず。

 

 

(あれって、確か鮫に襲われて死ぬんだっけ?)

 

 

 志貴がどの選択肢を辿っていくのかは、わからないのだ。

 ならばこちらから志貴を誘導して、BAD ENDに続く道を潰していく。それしかあるまい。

 

 

「えっと……アキさん、一つ訊きたいんですが、その指示はどうやって?

 盗聴器にはそんな連絡機能はついてませんけど」

 

「いや、そりゃ盗聴器で連絡取れるなんて思ってないって。それ盗聴違うし。

 志貴には携帯を買ってあるから、それで指示をだせばいいだけだろ?」

 

 

 先日、渡す時に絶対電源は切らないようにと言ってある。

 これで連絡する際“お掛けになった電話は、現在……”なんて事もないだろう。

 

 

「あわわわわっ」

 

「……何、その明らかにヤバそうなリアクション」

 

 

 変なフラグ立てるのやめてくれよ。

 

 

「あはー、実は今朝、翡翠ちゃんが志貴さんのベッドメイクをしてる時、机の上にある物を見つけましてですね」

 

「……嫌な予感しかしないな」

 

「それがその……携帯電話だったんですよ。

 出かける時に持って行く習慣がついてませんから、仕方がないと思いますけど……あは、どうしましょう」

 

「……な、なるほど(汗)」

 

 

 その発想はなかったわ。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「琥珀、そっちはどうだった!?」

 

「ダメです。従業員のほとんどに訊きましたが見かけていないと。

 と言うか、本当に志貴さんはホテルにいるんですか?」

 

「そ、それは間違いないはずなんだが……」

 

 

 多すぎだろ、ホテル!

 三咲町って都会だっけ? 探してみたら駅前にたくさんありました。

 

 

「もう日も完全に落ちちまった……琥珀、二人合わせて回ってない建物は後いくつある?」

 

「あと二軒です。一つは三咲町の少し外にありまして、ここからだと遠くなりますけど」

 

 

 携帯以外に志貴との連絡手段があるはずもなく、あの後急いでGoogle先生を使ったマップ検索。

 琥珀にも手伝ってもらって、二手に分かれながら一軒一軒聞き込み回っている。

 

 中には怪しく思って答えるのを渋る従業員もいるが、そこは遠野家の名を出せば問題ない。

遠野家だから仕方ない、とか言って情報提供はスムーズに進む。

 

 だが、それでも効率が悪いことには変わりない。

 さすがに翡翠までも巻き込むわけにはいかないし、いつ奴が現れてもおかしくないこの時間帯、そろそろ琥珀一人での行動も危険になる。

 

 

「だったら近い方に行くぞ。そっちの方が可能性が高い」

 

 

 アルクが隠れ家に使い、ネロが襲撃したホテル。

 もしかしたら名前があったかもしれないが、生憎と月姫の世界観やキャラ設定は細かく覚えてても、そんなところまでは覚えていない。

 

原作なら弓塚の家族が食事をしていた、アルクが一フロア貸し切っているって事ぐらいがせいぜいか。

しかし後半ははっきりと確証が持てるわけではないので、手持ちの情報としては使えない。

 

 

 待たせてあったタクシーに乗り込み、目的地へ。

 そこにも志貴が居なければ、残り一つは琥珀を帰らせて俺一人で向かうべきだろう。

 

 

「ここです。止めて下さい!」

 

「あい、代金五千円ぴったりになります」

 

「よし、任せた琥珀」

 

「経費からは落ちませんからね。あぁ、そういえば秋葉様の夕食どうしましょう。翡翠ちゃんは料理できませんし……」

 

 

 ぶつぶつ呟いている琥珀を残して、急いでホテルへ入った。

 どうする、従業員に片っ端から訊くか、それとももう恥とか捨てて大声で名前を叫びながら上の階へ駆け上がるか?

 

 

 考えながらもカウンターへ向かう。

 その時遠くで、いつか聞いたような会話が耳に入る。

 

 

 

 

「お客様、ペットを連れてのご入場はお断りさせて頂いているのですが……」

 

 思考が止まる。

 今のは俺に向けて言われた台詞じゃ無い。なのに、身体が強張るのを止められない。

 

 

「―――あれ? 今、ここに大きな犬がいたような……」

 

 

 ボトリと、何かが崩れて落ちる音。

 カウンターから振り向けば、そこには威圧感の塊が。

 

 

 薄気味悪く口元を広げて笑う悪魔がいる。

 何で笑っている。人を殺して、何故笑う。

 

 

 簡単なこと。それはあいつが正真正銘の化け物だからだ。

 

 

「―――さあ、」

 

 

 思考する暇なんてない。

 七夜の血に流れる本能のまま、即座に両足についてるホルスターから棒手裏剣を抜き放った。

 

 

 無言で放つ数は十。その全てを、敵の顔面に突き立てる。

 次の一手を考えろ! 状況把握すら出来なければ、速やかな死あるのみ。

 

 

「……“食事の時間だ”って言うのはやめてくれよ、ネロ・カオス。

 いや、正しくは彷徨海の鬼子、フォアブロ・ロワインだっけか?」

 

「…………ほぅ」

 

 

 顔の形が一瞬のうちに再生された。

刺さっていた棒手裏剣は高い音をたてて落ち、ロビーの床を虚しく鳴らす。

 

 

「……人間風情が、まさか私の名を知っているとな。

 それも久しく呼ばれていなかった昔の名を」

 

 

 真っ直ぐに俺を見る、と言うよりは観賞するネロ・カオス。

 餌から出た何とやら。ダメージなんてものは全く見られないが、そんな事は始めからわかっているのだ。

 

 今は気を引けただけで十分。

体内から獣を大量放出させられたら、打てる手もなくなってしまうから。

 

 

 周囲の人間は口が開いたまま、止まっている。

 パニックを起こす一歩手前。

日常ではありえない“異常”の恐怖で動けない人、下手に叫んだり動いたりすれば殺されると無意識にでも感じている人。

 

 アルクと志貴が異変に気付いて駆け付けるのが先か、ネロが俺に飽きてこの場の全員が喰われるのが先か。

 

 

「混沌の先に何があるのか……。

 答えは出たのか? ネロ・カオス」

 

「…………」

 

 

 ネロの腹が膨らんだかと思うと、そこからカラスが一羽、姿を現す。

 次の瞬間、カラスは身体を槍のように細く変化させ、

 

 

「死ね」

 

 

 弾丸となり発射された。

 

 

(―――(まが)れ)

 

 

 暫定距離50cm40cm……。回転軸、四、展開、発動!

 歪曲と同時に目標が本来の軌道からぶれる。首を曲げて、弾丸を避けた。

 

 

「……まだまだ、だね」

 

 

 目標の捕捉から発動までの速さ。七夜の動体視力があってのものだが、ここまで使えるようになった自分自身を褒めてやりたい。

 すっごい疲れるんで、後五回くらいしかできないけど。

 

 

 たかが人間と、今の一撃で殺すつもりだったネロの視線はまだ生きている俺のまま。

 相手の心の動きなんてものはわからない。ただ少しでも驚いてやがれと、心の中で必死に願う。

 

 

 ゆっくりと、その巨体が向き直る。

 今までは首を向けていただけだが、俺を魔術師とでも思ったのか、獲物を見る眼から狩る眼へと変わった。

 

 上出来。

 今ではほとんど知られていない本名まで言ってやったんだ。

そうこなくては、前線に出てわざわざ敵対してやった意味がない。

 

 

「―――貴様、何者だ?」

 

 

 ドスの利いた声が無性に響く。

 発せられる異様な威圧感に怯え、人が数人、倒れる音がした。

 

 

(……琥珀は、大丈夫だろうか)

 

 

 倒れる人から連想してしまう。

 

そもそも、俺は周囲の人間だけ守れればいいとか言っていたのに、何で今こうやって化け物と対峙しているのだろうか。この大勢の中で、本当に守りたいのは琥珀だけのはずなのに。

 

 

 ……でも、考えが矛盾していても、この行動は間違ってはいない。

 このホテルにいる数百人、全てが殺されてしまうのだ。中には小さい子供もいるし、赤ちゃんだっているかもしれない。

 

その子らが死ぬのを、黙って見ているのは辛すぎる。

この本編が終わったら、また皆と楽しく過ごしたい。ここで身の安全を考えて大勢の人を見殺しにしたら、その時に心から笑えなくなる。

 

 

(志貴はきっと来る。都合の良い言葉だが、俺は信じてる)

 

 

 腰に縫い付けてあった鞘から、短刀を抜き、構える。

 魔眼はすでに解放状態。姿勢を低くし、精一杯、相手を睨みつける。

 

 

 正体不明の魔術師。そう演技するよう、自分自身に言い聞かせる。

 まずは震える体を何とか止めて、落ち着きを払って奴の問いに答えよう。

 

 

「…………我が名は、天目一個。史上最悪のミステスなり」

 

 

 

 

 

 

 

 

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パロディ落ちでサーセン(--

あと遠野家ですが、原作より色々な所に影響力強くしてありますので。