棒手裏剣を投擲、相手がそれを対処した隙にインファイトへ移行する。

 

が、シオンはそれを予測してか避けながらに銃を乱射。

 シオンと同様、床を勢いよく転がった。

 

 

『首筋!』

 

「よしっ」

 

『足元、捕縛されます!』

 

「おぅ!」

 

 

 中距離から素早く見え難いエーテライトによる攻撃を、アサシンの指示通りに弾く。

 身の守りはアサシンに任せ、視線はシオンを逃さない。

 

 予想以上の反応速度。

 突破できない敵の守り。

 

 

 それに逡巡した刹那、シオンの動きが鈍くなり、

 

 

「その首、貰ったああぁっ!!」

 

 

 佇むコンテナを足場に壁を蹴り、喉元目掛けて刃を薙ぐ。

 

 

「その攻撃――予測してます!」

 

 

 視線が交差する。

 シオンは完全に、こちらを捉えていた。

 

 身体を屈め、カウンター越しに放たれる蹴り。

 真っ直ぐ正確無比に繰り出されたそれは、骨も砕くかと言う勢いで腹を穿つ。

 

 

 ――筈だった。

 

 

「っ、いない!?」

 

 

 シオンの強靭な蹴りに、幾重にも重なったフリルが揺れる。

 変わり身――ゴシック系満載の服だけを残し、シオンの前から人影が消えた。

 

 そして、シオンは罠に嵌る。

 

 

「悪いね!」

 

「いえ――――計算通りですっ!!」

 

 

 上空に飛ばされたエーテライト。 

身体を捻り、そこにいるであろう人物を捕縛する。

 

 

「貴女の、負けだ――――っ!!」

 

 

 地面に叩きつけられる。

 百にも及ぶ未来予測が、奇襲を完膚なきまでに潰した。

 

 

 

 

 否、これも――――変わり身。

 

 

 シオンは気付く。それもまた衣服であると。

 そして先との決定的な違い。

 

 

 捕縛したシャツに刺繍されたルーン文字。

 シオンには解らないだろうが、それは極初歩の――人目を引きつける効果を放つだけの、簡易魔術。

 

 

「なっ、これも偽も――!?」

 

「てめぇは俺を、怒らせた――――!!」

 

「きゃっ!」

 

 

 身に付けた物を一度限りの囮として、シオンへとついに接触した。

 

 

トランクス一丁のまま、抱き付き地面へと押し倒す。

 仰向けになるシオンの腹に跨り、両の手を頭の上で抑えつける。

 

 同時に魔眼を解放。

 不審な動きに備え、すぐにでも捩じ切れる状態に持っていき――、

 

 

「……俺の、勝ちだっ!」

 

 

 組伏したシオンを見下ろして、勝利を宣告した。

 

 

 

 

 

憑依in月姫no外伝

第二十四話

 

 

 

 

 

 ギリっと歯を食いしばりシオンは身体に力を込める。

 が、男と女。指一本まともに動かせないこの状態から逆転される程、やわじゃない。

 

 

「ま、まだ、負ける訳には――!」

 

「これ以上不審な動きをしたら殺す。もう諦めろ」

 

「……っ」

 

 

 殺気を込めた瞳で警告する。

 この状況から、シオンに手は残されていない筈。

 

記憶を呼び起こしながら、シオンに再び降参を進めようとして、

 

 

 シオンの視線が、裸体となった上半身を見つめる。

 抉られた左肩、血を垂れ流す脇腹。それに、何を感じたのか――、

 

 

 

 

 ――――瞬間、心臓がドンと跳ねた。

 

 

「ぐ……あ、ぁあ!」

 

「なっ、力が強まって――!?」

 

『アキ殿、後ろへ!!』

 

 

 アサシンの声が木霊すると同時に、投げ飛ばされる様にして床へ転がる。

 服を着ていないせいで受け身を取るも全身擦り剥き、痛みに涙を溜めた。

 

 

 薄ら紅い目をしたシオンは、苦しそうに胸を押さえながらも立ち上がる。

だが、その足は覚束なくふらつき、とても戦闘を続行出来るとは思えない。

 

 それでも、未だ敵意を見せるシオンにこちらも構えた。

 先の作戦は通用しなくとも、今の彼女なら難なく組み伏せられる自信がある。

 

 

吸血鬼に呼応した胸の高まりもすぐに収まった事から、彼女の中に眠る吸血鬼の因子が目覚めたのは一瞬だけ。

 その一瞬すら、シオンに取れば多大な精神疲労を起こすのだろうが。

 

 

「仕方ないが――もう一度だ!」

 

 

 シオンが呼吸を整える前にと、再度、脚部を奮い立たせ疾駆する。

 

 

「…………今の私では、貴女には敵わない」

 

 

 息を乱すも、冷静にこちらを見据えるシオン。

 右手の甲が光った瞬間、脳内がけたたましく警報を鳴らす。

 

 阻止すべく、拳を一刻も早く対象に届けと願い突き出した。

 

 

「来なさい――――アーチャーっ!!」

 

「させるかあああぁっ!!」

 

 

 光に目が眩みながらも突き出した腕。

 ガシリと、大きな掌に阻まれる感触に即座に後ろへ跳躍する。

 

 

「遅いよっ」

 

 

 が、それより一手早く重い膝蹴りが腹を穿つ。

 

肺から強引に吐き出される酸素。

一切手加減のないそれは、容易く膝を折り床へと平伏せさせられる。

 

 

 倒れる瞬間、身体を捻り天井を見上げる。

 仰向けに倒れたまま、呼び出されたサーヴァントの容貌を目に焼き付けた。

 

 

 煙草を咥えて、髪を後ろで縛った二十代半ばに思える青年。

 英霊と言うよりも人間に近い印象を与えるこのサーヴァントは、特に何の感慨も込めない目線を向けたまま、

 

 

「悪いな、坊主」

 

 

 銃口を向け、引き金を引いた。

 

「“Verzerrung(凶れ)”――!」

 

 

 銃を構えた右の手首へ回転軸を総動員し、捩じ切る勢いで魔眼を解放する。

 だがアーチャーのクラス特性・対魔力の影響か、それは一発目の弾丸を逸らしただけに過ぎず、捻る程度が限度に終わった。

 

 

 同時に、体内の魔力が空になる。

 

 計算ミス。

 キャスターと契約を結んだ事により、魔力の総量は魔眼一度の行使で底をついた。

 

 アーチャーのサーヴァントが、捻った手首を押さえ、今一度狙いを定める。

 

 

 確定する死。

 

 それを必死になって否定する。

まだ死ぬ訳にはいかない、この世界で死ぬ訳にはいかないと。

 

 

 一年前と今は違う。

 

せっかく琥珀に秘密を打ち明けれた。

志貴の奴も皆で暮らすために毎日修行を頑張っている。

 

 秋葉と仲直りをしていないし、翡翠も阿呆でまだ勉強を教えていない。

 橙子さんには何かとやられっぱなしだし、鮮花には借りを返していない。

 

 

 

 

 何より、このまま死んだら弓塚が死徒のまま、人の輪に戻る事が出来なくなる。

 

 

「ぐっ、ま、まだ!」

 

「……」

 

 

 身体中の生命力を掻き集め、魔眼を発動させる。

 アーチャーの首元に回転軸を――が、精々二つ程度の歪曲では対魔力の前には無意味なのか、事態は何も好転しない。

 

 

 死にたくないと足掻く人間の、精一杯の悪足掻き。

 ゴドーは弱った風な表情で一度目蓋を閉じ、スッと冷徹な眼に切り替えた。

 

 

 ――楽に死ねよ。

 

 

 そんな呟きが耳に届き……身体は足掻こうと抵抗する力をついに無くした。

 

 

 

 

 ――――刹那、壁が爆発する。

 

 

「ア、アキくうううううううんんっ!!」

 

 

 叫び声と共に弾け飛ぶ金属類。

 何事かとそちらへ銃口を向けるアーチャー――――の襟を、誰かがぐいっと掴む。

 

 

 ――弓塚さつき。

 ゴドーが弓塚の瞳と交差した瞬間、彼の身体が硬直する。

 

 

 弓塚が踏みしめた床がひび割れる。

 風神の如く荒々しい生命力を撒き散らして、弓塚はゴドーの顔面へ右手を回した。

 

頭蓋を粉砕する程に力を入れ、遠心力を利用して空いた壁から放り投げる。

引き金を引く間もなく、次の瞬間、此処から離れた海岸に巨大な水柱が立ち上がった。

 

 

「きゅ、吸血鬼!!」

 

「そういう貴女もっ!」

 

 

 弓塚の怪力を跳び退き紙一重で交わすシオン。

 振り下ろした拳が地割れを起こし、工場全体を大きく揺らす。

 

 シオンに体力はもう無い。

 だからこそ、一撃で仕留められなかった代償は何物にも代え難い。

 

 

「ロック解除――」

 

 

 シオンの狙いは、弓塚ではなかった。

 膝をつき、狙いを済ますのは――――、

 

 

「ア、アキ君を狙って――!?」

 

「馬鹿、来るなっ!!」

 

 

 こちらが立ち上がれないのを察してか、弓塚が咄嗟に前に出る。

 

 何が来ても右手の“魔術殺し”で受け止めると、前方にかざしたそれは、

 

 

「えっ――」

 

「チェックです。

 ――――ガンバレル・フルオープンッ!!」

 

 

 本来なら砲撃の反動からシオン自身を支えるエーテライトは、シオンの身体でなく弓塚の右手へ巻き付き、上空へと挙げられた。

 

 最初の奇襲に似た紫の魔力光が、銃口から莫大な魔力をもって弓塚を襲う。

 

 

「ゆ、弓つ―――――!!」

 

 

 右手を封じたまま直撃を受けた弓塚、反動で後ろへ醜く転がるシオンが瞳に映り……、

 

 

 

 

視界が塗り潰され、余波でボロ雑巾の様に吹き飛ばされた。

 

 

「ぶふっ……ごほっ」

 

 口に入った砂を吐き出す。

 指一本動かせない身体のまま、爆心地を見て唖然とした。

 

 

「……ゆ、弓塚? お、おい!?」

 

 

 口を切ったのか、叫ぶ度に口内が痛み血が滴る。

 だが、そんな事はどうでもいい。

 

 

 目の前の大惨事。

 倒壊寸前にまで至った建物内部は、粉塵を巻き上げて視界を酷く鈍らす。

 

 ただ明確に見えるのは、俺の眼前で深く一直線に抉られたコンクリート。

 これをまともに、“魔術殺し”も無しにその身に喰らえば――――

 

 

「ゆ、弓塚……返事をしろ!!」

 

 

 想像を打ち切る様に、ガラガラになった声で叫ぶ。

 

 胸の苦しさに、何を考えればいいのか分からなくなる。

 不安や怒りに、叫び方すらわからなくなる。

 

 

「そ、そんな……あいつ……」

 

 

 声を上げる事しかできないのに、叫ぶ力はどんどん無くなっていく。

 

 込み上げる感情にひたすら耐える。

 

 致命傷どころではない。

 砂埃の舞う中に、人影が見えないのだ。

 

 

弓塚は頑丈――何、馬鹿な事を今まで言っていたのだと唇を噛む。

そんな事を言ったばかりに、弓塚は自身を盾としてしまった。

 

 

「う、うわ……うわぁぁ……」

 

 

 己の浅はかさに、もう何も考えれない。

 

 

「弓塚! ゆ、ゆみづがぁ……!」

 

「と、見せ掛けまして! 実はピンピン生きてるわたしでした!!」

 

「……」

 

 

 目の前が真っ白になった。

 

 

「……ゆ、ゆみ、つか?」

 

「うん、怪我は無しって訳にはいかなかったけど、アレくらいでやられるわたしじゃ――ってな、泣いてる!?」

 

「……うぅ」

 

 

 ヤバい。

 こいつにドッキリやられるとか癪だが、文句を言うにも目が潤んで仕方ない。

 

 

「……ぅ……ひっく」

 

「ア、アキ君!? ご、ごめん、そんな心配させちゃった!? ――あぁ、もう、わたしのバカバカ!!」

 

「し、心配してにゃいっての、馬鹿野郎……!

 それよりも、シ、シオン……敵は――」

 

 

 顔を見られないよう俯いて、何とか頭を働かせる。

 弓塚はあたふたしながら、ひょいっといつの間にか捕縛してあったシオンを見せた。

 

 

「えっと、取りあえず眠らせて、この子の持ってた糸で縛っておいたよ。銃も取り上げて……

 アーチャーさんは倒した訳じゃないから、また襲ってくるかもしれないけど」

 

 

 生け捕りにして警戒してれば大丈夫だよね、と確認するように訊ねる弓塚に頷く。

 

 未だ感情は落ち着こうとはしてくれないが、戦闘は終了したと解り今度こそ全身から力が抜けた。

 

 

「ア、アキ君……えっと」

 

「泣いてない」

 

「え?」

 

「……泣いてないぞ。俺は、な、泣いて何かいないんだからねっ!」

 

「う、うん、わかった……そうだね、あははっ……」

 

 

 困り果てた様に渇いた声で笑う弓塚。

 と、何を思ったか倒れるこちらのすぐ頭の上へ屈み、頬笑みを向けた。

 

 

「で、でも……わたしのために泣いてくれるなんて、凄く嬉しかったかも」

 

「泣いてないって言ってるだろうがああぁっ!!

 

「わわっ!?」

 

「――って、叫んだらクラクラしてきた」

 

「ちょ、ちょっと待ってね!?」

 

 

 よいしょっと頭を持ち上げられ、気付いたら膝枕の態勢に。

 弓塚の顔を見ると、口元を緩めて目を細めていた。

 

 

「えへへ、気持ちいい?」

 

「……で、何で生きてるんだ、お前? それと、あのタイミングで良く駆けつけられたな」

 

「無視された……もう。答えないなら教えてあげない」

 

「……あ〜、それなりに癒される。ほら、答えたぞ」

 

「顔真っ赤にして、それなりとか嘘ばっかり」

 

「赤いのは他の要因だ」

 

 

 意味がわからなかったのか、首を傾げる弓塚。

 話を促した後、ようやく事情を説明してくれた。

 

 

「琥珀ちゃんとキャスターさんで言われた通り待機してたんだけど、途中で何か……ピピッと来てね」

 

「何だ、その電波っぽいの。魔力か?」

 

「うぅん、キャスターさんは気付かなくてわたしだけ。で、そのすぐ後に琥珀ちゃんがアキ君が危ないって叫んで……」

 

「……多分、吸血鬼の波長だな。弓塚が感じた奴は。

 その捕縛した子、お前と同じ吸血鬼だからさ」

 

「あ、やっぱり!? 何か近い感じがするなぁって思ってたんだ」

 

 

 弓塚は物珍しそうに、今は目蓋を閉じて気絶しているシオンへと眼差しを向ける。

 それを見ながら、感応能力って便利なものだなぁとしみじみ別の事を考えた。

 

 

「それで、こっちの方が気になるんだが――あの砲撃はどうした?

 レプリカとは言え洒落にならない威力だってのに……右手は使えなかったんだろ?」

 

「まさかのコンボに、実は結構焦っちゃいました」

 

「完全に超越種になったな、お前」

 

 

 幼馴染だからって、最早人の皮を被った化け物という事実は忘れない。

 泣かされただけに、この恨み晴らさずにおくものかと心に誓う。

 

 

「な〜んか物騒なこと考えてる顔してるよ、アキ君」

 

「気にするな。で、“魔術殺し”無しにどう防いだんだよ、本当にさ」

 

「んっと、まだアキ君に言ってなかったんだけど……」

 

「何を?」

 

「わたし、全身で“魔術殺し”使えるんだよ?」

 

「……」

 

 

 固まった。

 

 

「は?」

 

「ほら、橙子さんに色々と見て貰って……能力を強めると同時に、右手以外にも練習したんだ」

 

 

 心配させた事を申し訳なく思ってか、頬を掻きながら少しずつ弓塚は語る。

 

 

「左手で発動できて、次は右腕、左腕。それを見て橙子さんが、どうせなら全身で発動できる様にしておけって」

 

「橙子さんが……」

 

「うん。もし右手だけでひたすら能力を引き出す練習してたら、今回は危なかったかも……」

 

 

 弓塚の性格を考えて、この様な状況になる事まで見越していたのか。

 師事を付けてくれた封印指定の人形師に、胸の奥底から感謝した。

 

 

 ……例えもう一度生まれ変われたとしても、きっと自分はあの人には届かない。

 怖いし、性格悪いし、人遣い荒いなど無茶苦茶なところも多いが――――

 

 

「――――凄く、橙子さんにお礼が言いたくなった」

 

「うん、わたしも! この戦争が終わったら、一番に言いに行こうね」

 

「……そうだな」

 

 

 荒れに荒れた周囲を見渡す。

 そんな中で頬笑みを向けてくれる弓塚が、今はひたすらに愛おしいと、そう思えた。

 

 

 シオンを捕縛。

 アーチャーもといゴドーが事を起こすか心配だが、シオンを生け捕りにしている限りは大丈夫だろう。

 

 もう少し休憩して身体が動くようになったら、シオンにはたくさん話がある。

 タタリ――ワラキアの夜に関しては、こちらも無関係ではないのだから。

 

 

 

 

 今夜の戦争も無事に終わりを迎えた。

 結局、一人で戦った何てとても言えたものではないが……力を出し切った今は妙に身体が心地いい。

 

 元が退魔の一族なんて戦闘民族だし、こういった方がむしろ日常の類かもしれないが。

 

 

 

 

 ……さて、ではこの天然にあと一言。

 事態を認識させて、早々に幕を閉じようか。

 

 

「――弓塚、一つ聞いていいか?」

 

「うん? 何かな?」

 

「全身で“魔術殺し”をするのはいい。

 ――――で、自分の姿がどうなるかまでも解ってるよな?」

 

「へ、身体?

 ……ちょ、ちょちょちょ、きゃあああぁあぁ――――っ!!」

 

「へぶっ!」

 

 

 突然立ち上がったせいで床に思いっきり頭を打ち付ける。

 星がちらつくも、目の前の光景が色々と異常なので出来る限り目を逸らす。

 

 

「わ、わたし――ふ、服が、服がないじゃん!?」

 

「蒸発したに決まってるだろ!? 気付けよ、おい!」

 

 

 慌てて秘所を隠そうとする弓塚。

 しかし悲しいかな、今の弓塚は方腕なので、まぁ、アレだ。

 

 ようやく起こした弓塚の正常な反応に、こちらも羞恥心が沸き上がる。

 

 

と言うか、こっちだって服はシオンとの駆け引きで囮役に使用したため、見事にトランクス一丁の姿。

 そして目の前には一糸纏わぬ弓塚の姿。アウト過ぎて顔から火が出る。

 

 

「ア、アキ君、こっち見ないで――――って、何かおっきくなってるぅぅ!!」

 

「ストップ、黙れ! いいから早くあっち向けよ!?」

 

 

 慌てて互いに背を向けるも、こっちが動ける様になるまで傍を離れる訳にはいかない弓塚。

 

 絶対に動かない様にと念を押した琥珀とキャスターが駆けつける訳もなく、片腕で裸の弓塚がこちら二人を引きずって向こうと合流する訳にもいかない。痛いし。

 

 

 結局、身体に力が戻るまで、弓塚と無言でこの場に佇まなければならないと言う状況。

 

 

 

 

 振り返って、思う。

 

 

 ――――橙子さんは、おそらくここまで見越して弓塚にアドバイスをしたのだと。

 

 

 相変わらずの外道魔術師が笑う様を脳裏に浮かべて、前言撤回で恨み事を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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聖杯戦争第二戦、終了。オリキャラ出さずに頭捻ったらゴドーさんしかいなかったでござるの巻。

鋼の大地の主人公である“銃神・ゴドー”。彼を知らない人も多いでしょうし、作者もキャラマテとネット上の知識だけ。

ビジュアルや性格はエヴァの加持さん似。戦闘スタイルはコート纏った狙撃手というので、衛宮切嗣を思い浮かべれば分かり易いかと。

 

天寿の概念武装であるブラックバレルについてはある程度の独自設定を。その他主な設定は「じょんのび亭」の「奈須きのこ作品用語集」を参考にしていますので、このSSで説明不足と感じましたら、そちらへ足を運んでもらえると助かります。

 

*“銃神・ゴドー”の口調はソースが見つからずオリジナルです。

 もしもソースがありましたら掲示板の方へ宜しくお願いしたいかと。