*これはタイトル通り月姫の憑依系ssです。主人公はオリジナルで出来ている。

オリキャラ物は他ssと比べて嫌いな人が多いかなーと思い、オリキャラは主人公のみであり、容姿や能力もTYPE-MOON内の作品から持ってきていますが「やはり受け付けない」「それ以前に憑依とかダメ(><)」と言う方は読まない方が宜しいかと…。

 それでもやはり多くの方に読んでいただけると嬉しいですが。

 

 それともう一つ。作品の感想などを書いて頂けるのであれば掲示板にお願いします。またオリキャラ物は初めてなので「主人公がご都合主義」「無意味に目立たせすぎ」などの批評も宜しければお願いします。

 

 ちなみに以下、このSSでの原作との変更点を

 ・浅神家には“歪曲”の魔眼が受け継がれている。(原作では“不思議な力が宿る”程度)

 ・歪曲の強さは平均で腕一本を何とか曲げられるくらいで。(原作では藤乃→橋折れる、普通→人の腕は七日)

 ・志貴が遠野家に引き取られた時、名前は七夜志貴のままで。

 

 

 

 

 

 

プロローグ

 

 

 

 

 

「――×××君! そっち行ったよっ!」

 

 

 子供の叫び声。

 

 ついで疾走する獣。背中には幾本もの刃物が突き刺さり、それでも尚、逃げ回る

 

 そこは日の光がほとんど届かない深い深い森の中。

 

 獣の先に一人の男の子。

 色白の肌に中性的な顔立ち。髪が腰まで伸びているせいで、見た目は男と言うより女の子。

 倒れていた身体を起こし大きく背を伸ばす。

 

 そして周りを見て目を開く。

 

 

「――おい、ここはどkっ!!!」

 

 

 そのまま走ってきた猪にふっ飛ばされた。

 

 それなりに身体は鍛えていたので、ぶつかる直前に横に跳んだ……はずなのだがいつもと違い身体がついてこれず、森の中を血を撒き散らしながら転がった。

 転がって転がって、止まった所にまた猪が突進を始める。

 

 

「お、お客様……店内での…暴力行為は、他のお客様の迷ぶっつ!!」

 

 

 マニュアル通りに喋っていたところでもう一度体当たりを食らう。今度はモロだった。

 

 

「い、猪だと……? こんなもんアニメイトに連れてきてどうする……って、こ、ここは?」

 

 

 痛みに身体を抑えながらも悪態を吐く、と同時にここがバイト先の店ではなく、もう富士の樹海も真っ青なぐらいの森の中だと気付く。実際に行ったことはないけれど。

 

 

 おかしいぞ、ファック! と思わず叫ぶ。何だってこんな所にいるのか全く分からない。

 

 

誘拐か、それともドッキリか、もしくは自分の気が狂ったのかとと頭を抱える。しかしもしもドッキリの場合、後々恥ずかしいのは自分なので外見だけでも冷静に見えるよう、取りあえず落着きをはらう。

 

そもそもあり得るはずがない。さっきまでバイトをしていたのに次の瞬間には未開の土地なんてクレイジーにも程がある。

 

 さて深呼吸を、とするところで猪がコークスクリュー張りに回転を掛けた突進で宙に放り投げだされた。おそらく止めの一撃をかけたのだろう。しかしまだ微妙に意識が残ってた。

                                                           

 

 落下する身体。受け身を取ろうとして……無事成功。でも骨が二三本折れてしまった。

 どんだけ脆い身体だよ……少なくともそんな軟弱に鍛えた覚えはないと身体を睨みつけて――知らない子供の体だった。うん、なら仕方ない。

 

 

 でもここで死ぬのは仕方なくない。意識が薄れていく中、そいつだけは悔しいし怖かった。

だからと言って、デンプシーをしながらこちらに爆走中の猪を止める術は浮かばない。

 

走馬灯っぽいのが頭に流れて、自分の意思とは関係なしに勝手に人生を振り返り始めた。

どうやら、身体はもう限界らしい。

 

ここはどこなのか。そもそも何でこんなところにいるのか。

それすらもわからないまま、「BAD END?」の文字が脳裏を過ぎて――

 

 

 

 

 ―――太鼓のバチのような鉄棍を持った男が、風のように一瞬で目の前に現れた。

 

 

「なっ!?」

 

 

 この驚きは助けられることではなく、あり得ないことへの驚き。

見たことが、どこかで見たことがあるぞと猪のせいでボケた頭が訴える。

 

 

(そうだ、確か七夜……)

 

 

 七夜黄理。遠野志貴の本当の父親であり、七夜家最後の党首……とゲームの用語辞典に写真だけ載っていたのを思い出した。

                         

 

(しかしそれは月姫……ゲームの設定であって)

 

 

 そう思っている間に目の前の男は猪に二対の殴打器を叩きつける。

 一打、二打、三打。四打目を振るうことなく、速やかに獲物を壊す姿は恐ろしくも芸術的であった。

 

 

「大丈夫か!? ×××」

 

 

 それとは別に、慌てながら自分の身体を手当てする子供の姿。

 その子が眼鏡をしてないのは当たり前。何故ならまだこの時、彼は直視の魔眼を持っていないのだから。

 

今から何年後か、そこまで詳しくは知らないが一族全てを殺されて、養子になって、そこから無茶苦茶な出来事に巻き込まれる、この世界の主人公の一人。

 

 

「……志貴、か?」

 

「良かった、喋れたんだ。襲われたショックで声が出せなくなったかと心配したよ」

 

 

 その志貴のほっとしたような顔を見て、包帯を巻く際に伝わる肌ざわりを感じて、これは最新のバーチャル技術なんかじゃ決してないなと、気づかされるようにそう思った。

 

 

 憑依。それも幽霊に憑かれたとかではなく、現実から別世界への憑依。

 

 考える事は山ほどある。でもその前に、色んなショックでパンクした頭が、破裂を防ぐために強制的に意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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