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*このSSは「月姫in憑依」の続編です。

 

 以下、このSSでの原作との変更点を

 ・浅神家には“歪曲”の能力が発現しやすい。(原作では“不思議な力が宿る”)

 ・歪曲の強さは平均で腕一本を何とか曲げられるくらいで。(原作では藤乃→橋折れる、普通→人の腕は七日)

 ・志貴が遠野家に引き取られた時、名前は七夜志貴のままで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アキさん、子供つくりませんか?」

 

「……へ、何で?」

 

「いえ、HPの掲示板に書かれていましたので」

 

 

 何食わぬ顔で、トンデモ発言をする琥珀。

 表情からは冗談か真か、判断できない。

 

 

(え……てか、まだ十五だよな?)

 

 

 琥珀は一つ上なので十六才。

 間違っても本編が終わって十年後とか、そんなキングクリムゾンはしていないわけで。

                                                   

 

「アキさん?」

 

「う……」

 

 

 本編が終わっても元に戻る気配がなく、未だこの身体に憑依したまま。

 もう何年もこっちの世界にいるから、そろそろ月姫が二次元の世界とかそういった意識も薄れてきた。

 

たぶん一生このままなんだろうと、本編を終えたと同時に認めつつある。

 

 

 で、そうなると同時に周囲への見方も変わってきた。

 別にゲーム感覚で今まで過ごしてきたわけじゃない。けど、心のどこかで、ほんの少しだけどそういった感情があったのは事実だ。

 

 それが完全に消えた。

この前、琥珀と弓塚に語った“夢”も、自分の中で区切りをつけたかったから。

 

 

 要するに何が言いたいのかというと……、

 

 

 

 

―――琥珀が可愛く見えてきた。

 

 

 

 

(いや、可愛いのは昔からだが……)

 

 

 何と言うか、今までは二次元的な意味でだ。弓塚しかり、翡翠しかりでそんな感じ。

 しかし、最近はこちらの微妙な心境の変化とともにそこら辺もリアルになった。

 

 

「い、いきなりそんな事言われてもだな……」

 

「はい、着きました」

 

「まだ自分で稼ぎも……ってどこに?」

 

「秋葉様の下宿先ですよ。案内頼んだのアキさんじゃないですか」

 

「……そうでした」

 

 

 ビジネスホテルの入り口で、建物を見上げる。

 

 死闘をくぐり抜けてから一週間。

そのほとんどを、秋葉との関係修復というか槙久を殺した言い訳の準備に費やした。

 

 

 原作でもあったように、日記とかあれば槙久の所業を証拠として提示できたのだが、なぜか槙久身辺に関わるものは何一つとして見当たらなかった。

 

琥珀が言うには、屋敷が崩壊した後に秋葉自ら出向いて探したらしい。

 

 だとすれば、それらの資料は秋葉が全て握っている可能性が高いだろう。

こちらと距離を取っているのも、何か証拠をみて確信しているのなら頷ける。

 

 

「秋葉と対面切って話す……警察に自首する気分だ」

 

「……無理に会いに行かなくてもいいんじゃないですか?」

 

 

 アキさんが悪いわけじゃないんですから、と不満そうに呟く琥珀に、決心が緩みそうになる。

 

 

「それでも今の関係のままだと良くないだろ? 親殺ししておいて、十年も黙っていた俺にも非はあるし」

 

「それは仕方のないことです。秋葉様と言えど、簡単に話していい内容ではなかったのですから」

 

「……まぁ、秋葉だってそのくらいはわかってるだろ」

 

 

だからと言って、秘密にしていた事が許されるわけでもない。

 

 秋葉が全て把握しているのか、それともまだ知っていないのか。

そのどちらにしても今日をもって全て話し、秋葉には葛藤してもらうしかないだろう。

 

 

 ロビーに入る。

 秋葉の部屋は最上階の一室。死にはしないが、結果によっては今後の身の振り方を考えておかねばなるまい。

 

 

「さて、気合い入れていくとするか!」

 

「そういえばアキさん……もしかしてさっきの言葉、真剣に悩んでくれました?」

 

「頼むから今は集中させてくれ……」

 

 

 調子が狂いつつある、今日この頃。

 

 

 

 

 

憑依in月姫no外伝

第一話

 

 

 

 

 

「―――勘当、です」

 

「あ、秋葉様っ!?」

 

「ちょ、落ち着け琥珀!」

 

 

 緊迫した雰囲気の中、放った秋葉の一言に琥珀が身を乗り出す。

 肩を押さえ、無理やり座らせて……秋葉へと視線を戻した。

 

 

「……秋葉、それ本気で言ってるのか?」

 

「……はい」

 

 

 睨みつけるこちらに対して、秋葉は自分の手の甲を見つめたまま。

 

俺と志貴の一族を皆殺した事と琥珀への強姦、そしてその槙久を殺した者の処遇を震える声で紡ぐ。

                                             

 

「……時間を、ちょうだい。今はまだ……」

 

「そうか、わかった」

 

 

 秋葉の意向はわかった。だったら、これ以上長居しても意味はない。

 

 俯いたままの秋葉を残して部屋を出る。

 

 

「ア、アキさん、待って下さい」

 

 

 慌てた感じで、袖を掴み引きとめる琥珀。

 勘当という言葉に若干動揺しているのか、心配そうな面持ちで詰め寄ってくる。

 

 

「普通に納得しちゃだめですよ! アキさん、追い出されちゃったじゃないですか」

 

「大丈夫だって。勘当と言っても、秋葉のは一般のそれとは違うだろ」

 

 

 時間がほしいと秋葉は言った。

 親と身内の裏の事情を同時に知って、感情が手に余っているのだ。

                                                                             

 

「楽観的だが、心の整理がついたら何とか収まるだろ。

幸いにも秋葉が資料を持っていた事だし、そこらの子供と違って物事だって客観的に捉えられる」

 

「でも、元々の原因は私ですから……アキさんが出て行かれるなら私も」

 

「ちょいと落ち着け。確かに言われた以上出ていくけど、別に離れらへんに住めば構わないだろ」

 

 

 離れと言えば現在、弓塚の住処に当たる。

 

 秋葉は俺を親殺しから嫌っているわけではない。

 少し前まではそうだったかもしれないが、今は父の行為も知ってうやむやになっている。

 

 

 秋葉だってまだ中学生。

年齢を考えたら賢明な判断だと思う。

 

だから秋葉の言葉は納得できるものだって言っているのに、琥珀にとっては今一つ腑に落ちないらしい。

 

 

「身内と身内同然だった人の裏面を突きつけられたからな。感情が揺れるのは仕方ないだろ」

 

「むぅ……」

 

「琥珀だって同じことがあれば……例えば、実は俺が異世界からの来訪者で、しかもこれから起こる事を全て知っていた。そうだったらどうする?」

 

「全て知っているって……未来予知ですか?」

 

 

 いきなり脱線した話に勢いを削がれ、琥珀の口が止まる。

 

 

「まぁそんな感じ。琥珀の事とか、猟奇殺人の事とかな」

 

「……知っていたのに、あんなに怪我をしたんですか?」

 

「へ?」

 

「と言うより、それならもっと危険を避けて下さい。下手したら死んでたんですよ、アキさん!」

 

「……何で俺が怒られてるんだ?」

 

「とにかく、です」

 

 

 回れ右して秋葉の部屋へと戻る琥珀。

 ドアノブに手を掛けながら、まるで説教するようにこちらを見据えた。

 

 

「せめて秋葉様から生活費くらいは貰っておきませんと。

アキさんだけが悪いわけじゃありませんから、こればかりは譲れません」

 

 

 喧嘩を売りに、と言ったら語弊があるが、いつになく強気で秋葉に向かう。

 

琥珀が味方してくれるのは嬉しい。しかし今の秋葉は結構弱っているので、あんまり責めるのも酷である。

 特に、全面的に被害者の琥珀には何も言い返せないわけだし。

 

 

「生活費は欲しいが、琥珀に頭の上がらない秋葉は見たくないな……」

 

 

 できれば全てが元通りになってほしいのだ。

 

 俺と秋葉の仲が戻った時に琥珀と秋葉の立場が逆転していたら、望んでいたものとは違くなる。

てか、それだと秋葉が不憫すぎる。

 

 

 そんな訳でもう一度。

溜息を吐いて、今度は琥珀を説得するために部屋へ戻った。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「もう、全くアキさんは」

 

「……そろそろ機嫌直せよ、と言うか、そんなに秋葉のこと嫌いだっけ?」

 

「別に嫌いじゃありませんよ。それでも、今回の件は槙久様を擁護し過ぎです」

 

 

 隣を歩く琥珀は秋葉との会談が終わって以後、ずっと眉間に皺を寄せている。

 

結果として、俺はしばらく顔見せんな、琥珀は体裁として減俸という形に収まった。

 親戚どもには事情を伏せておいてくれるらしいので、この件が広まる心配もない。

 

 

「そもそも、元凶はあのエロオヤジなんですよ?」

 

「琥珀、もう少しオブラートにだな……」

 

「それじゃロリコンですね」

 

「いや、それは志貴だろ?」

 

 

 まぁ、正直に言えば不満はある。

 

 人殺ししておいてなんだが、こっちに罪悪感は微塵もないのだ。

反転衝動を抑えるためだからといって、八才の女の子を強姦する理由にしていいはずがない。

 

 加えて、槙久は七夜の里の身内や子供たちも虐殺している。

そんな奴に殺してしまってごめんなさい、なんて感情は微塵も沸かん。

 

 

……人として、少しヤバいかもしれないけど。

 

 

(だから、本当は秋葉に文句を言ってやりたい気持ちもあるんだが……)

 

 

 視線を横に移すと、相変わらず機嫌の悪い琥珀がいる。

 

 そう、琥珀が怒っているから、こっちとしては秋葉を責める気勢を削がれてる感じ。

 二人して秋葉に文句を言うのは、些か気が引ける。

 

 

 もしかしたら、琥珀はそれを見越してわざと必要以上に怒っているかもしれない。

 

 

「……でも、そのストレス解消に買い物に付き合わされるのが俺って何かおかしくないか?」

 

「何言ってるんですか。追い出されちゃったんですから、必要なものは揃えておきませんと」

 

 

 両手に買い物袋を大量に抱えて、背負ってるバッグはこれ以上ないくらいに膨らんでいる。

 ちなみに背中の荷物はそのほとんどが輸血パックである。

 

 秋葉に会いに行ったのは昼頃だったはずなのに、今は夕暮れ。

 何と言うか、一日が潰れてしまった感じだ。

 

 

「買い物は別にいい、一時間そこらで終わったしな。けど時南医院で時間かかり過ぎだろ!?」

 

「仕方ないじゃないですか。手続きが色々とありましたし、薬についても聞いておきたい事が多かったですから」

 

 

 琥珀が宗玄の爺とずっと話し込んでいたので、こっちはちょうど暇だった朱鷺恵さんの話し相手をさせられていた。

 琥珀と似たタイプの人だが、何かあの人は男を知り尽くしているような感じがしてどうにも苦手である。

 

 

「輸血パックじゃなくて、血液を錠剤にしてさっちゃんに渡したいんですよ。

飲む時はいつも苦いって言ってますし、秋葉様も最近になって血液を摂取し始めましたから」

 

「能力を使ってたからその反動だな……しかし、血液を薬みたくなんてできるのか?」

 

「はい、必要なのは吸血行為ではなく人の遺伝子情報ですから、原理は栄養剤と同じです。そんなに簡単ではないですけど」

 

 

 別に困難な事ではない、と言い切る琥珀を見て、やっぱり頭いいなと実感する。

 それこそ、もし普通に生まれて普通に育っていたら……今頃はレベルの高い高校で生徒会役員とかやってたかもしれん。下手したら生徒会長か。

 

 

「そうか……ん、ちょっと待て。お前ってばいつの間に薬剤師の免許なんてとったんだ?」

 

 

 まだ取るには年齢が足らない筈。

 それにしては薬を生成する原材料や輸血パックなど、一般人では仕入れられないものも問題なく手に入れているし。

 

 

「戸籍を改竄しているので、年齢の問題は解決済みです。

と言うより、私は“遠野家”の内側まで入っている人間ですから、戸籍はあって無いようなものです」

 

「……それもそうだな」

 

 

 大事な用件は遠野の名を通せばいい。

故に個人の証明になるようなものはいらないわけで。

 

 

(翡翠と俺も似たようなものか)

 

 

 身分証明証なんて持っていないし、戸籍上がどうなっているかも知らない。

 仕方のないことだが、偽名でも何でも、取りあえず自分がどうなっているかくらいは知っていたかった。

 

 

「……今度、秋葉に聞いてみるか」

 

 

 もちろん、槙久の件が一段落してからなので大分先になってしまうが。

 

 

「さてと、買うものはもう無いですね。アキさん、お疲れさまでした」

 

「これを運ばなきゃいけないけどな」

 

「あはっ、死闘をくぐり抜けたアキさんなら余裕ですよ」

 

 

 皮肉交じりに笑いながら、琥珀は帰りの道を先に進む。

 

 

「待て琥珀、まだ用事は残ってるぞ」

 

「あれ……何か買い忘れてました?」

 

 

 琥珀の様子は、演技ではなく本気で悩んでるっぽい。

 ついこの間に話した事でも、都合の悪い事はすぐに忘れる性質らしい。

 

 一人では不安なので、携帯で連絡を取る。

 急に反対方向へ歩き出した俺の後ろを、慌てて和服の少女が着いてきた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「あ、やっと来た。呼び出しておいて遅いんじゃないかな」

 

「さ、さっちゃん!?」

 

「時間通りだって。三次元さっちんが早かっただけだろ?」

 

「さらに変な呼び方しないでよ!」

 

 

 街中でこちらを見つけて手を振る弓塚。

 日も沈みかけているので、怪しい恰好でないことに俺も安心。

 

 

「よし、琥珀ちゃんのために気合い入れて選ぶよ」

 

「え……アキさん、買い物ってまさか」

 

「目の前を見ろ。それが答えだ」

 

 

 夕方と言えど結構混んでおり、出入り口からは袋を手に下げて帰る人がちょくちょく見える。

 着飾されたマネキンを見て、さっそく琥珀に似合うものを発見。自慢じゃないが、俺も似合うかもしれん。

 

 

「さ、入るぞ」

 

「和服とか売ってたりは……」

 

「あるわけないだろ?」

 

「そ、そういえば夕飯の手伝いを啓子様と約束してました。早く帰らないと私の信用ガタ落ちです!」

 

「気にするな。前なんて三日間も勝手にいなくなってたんだから、今更だ」          

 

 

 それに普通の女の子っぽい服を着た琥珀を見れば、あの人はお咎めなんてしないだろう。

 俺らは啓子さんからすれば子供なんだし、逆にそういった面を見れない方がかえって心配するに違いない。

 

 

「えっと、お金もありませんし……」

 

「俺が出すから大丈夫」

 

「む、無駄遣いは駄目ですよ、アキさん?」

 

「悪あがき乙」                                 

 

 

 弓塚と二人で琥珀の両脇をがっちり捕まえる。

 顔が青ざめる琥珀……って、少々オーバーすぎやしないか?

 

 

「琥珀ちゃん、そんなに嫌がる必要ないと思うんだけど」

 

「うぅ……そう言ったって」

 

 

 さすがに気の毒になったのか、店の手前で弓塚が止まり顔を伺う。

 何かよっぽどの理由があるのか、心配になって声をかける。

 

 

「わたし、まだ琥珀ちゃんのことで知らない事もあると思うから……言ってくれれば、アキ君やっつけるよ?」

 

「おいこら、勝手に悪者にすんな」

 

 

 優しく語りかける弓塚に、琥珀の瞳が揺れた。

 

 

「さっちゃん……理由、笑わない?」

 

「もちろんだよ!」

 

「アキさんも?」

 

「時と場合による」

 

 

 人が溢れる街中、その喧騒で放つ小さな一声。

 

 

 

 

「……………………下着、持ってないんです」

 

「さっさと行くか」                              

 

「アキ君、予算大丈夫?」

 

「ちょ、ふ、二人とも待って下さいよ!」

 

 

 顔を赤くした琥珀が、叫びながら追ってくる。

 なかなか珍しいその姿に、思わず記念にと携帯で一枚撮っておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小説置場へ

 


これはひどい(オチ的な意味で)

ほのぼのって難しいですね。キャラクターを生き生きとさせる……取りあえずこれ目標。

 

相変わらず需要があったものかわかりませんが、今度は「憑依in月姫no外伝」として書いていこうと思います。

あ、タイトルは適当なんで気にしないでくれると助かるかとorz